実用書とは、単純に言えば「日常生活において役立つ本」です。現在では死語になりつつありますが「ハウツー(how-to)本」というジャンルです。知識や技術などの“学びを提供する本”のが実用書と言えるでしょう。日常生活に直結する内容が多く、読者層も幅広いのでヒット作品も数多くあります。
・実用書とは何か?
・実用書が担う役割について
・著者としてデビューしたい方へ
・実用書の出版で得られるメリット
・商業出版と自費出版
実用書とは何か?
本屋さんでは「生活実用書」「趣味実用書」「婦人実用書」など、実用書のなかでも区分されていることもあります。
これは明確な区分ではありません。例えば、生け花であれば、もし「日常的に生け花を飾る習慣を身に着けよう!」という本であれば生活実用書になります。それが「生け花の理論や技術」であれば、趣味実用書としても成立するわけです。
<生活>
マナー
華道・生け花
作文・文章
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インテリア
就職・離職
資格・検定
<趣味>
手芸・クラフト
車・バイク
スポーツ
アウトドア
パズル・ゲーム
アマチュア無線
カメラ・ビデオ
占い
<婦人(女性向け)>
料理
掃除・洗濯
整理整頓
出産・子育て
教育
家庭医学
いづれにしても知識や情報または技術を『学ぶ』という点では同じです。その学ぶ情報が日常生活に密接した内容であれば「実用書」となり、ビジネスや仕事に関するものであれば「ビジネス書」になります。他にも「自己啓発本」というのもあります。
実用書と自己啓発本の違いとは、かなり難しいところですが、実用書のなかに含まれていることが多分にあります。例えば、身の回りの掃除や整理整頓をすることで「気持ちの整理をつける」という本において、その整理方法や技術があれば実用書であり、それによって意識を高く保とうという啓発であれば自己生活本とも呼べます。
この顕著な例としては、婚活している女性が探している本は「結婚するための知識や技術」や「出会うための手段」などです。それは自分を磨くような「自己啓発」に近い内容であったり、婚活に必要な技術を知るための「実用書」的な内容であったりします。
つまり、実用書とは「自己啓発本」を含んでいるジャンルという認識で良いと思います。特にどちらかに区分する必要もありません。それを実際に区分するのは読者(書店員さんを含む)です。もし著者として本を書くのであれば明確にしておいた方が執筆しやすくはなります。
実用書が担う役割について
実用書の役割とは、やはり日常生活における満足感や達成感を“読者に提供する”ことです。実用書を手にする読者(探している読者)は、何かに不満や不安、何かしらのモヤモヤを感じて、それをクリアにするために「本」を探しているわけです。
実用書には、初心者向け、中級者から上級者向け、プロ向けなど読者のレベルに合わせた本があります。基本的には、それらを一冊の本でまとめるのは難しいと思います。もし欲張って全てを網羅すると意気込んで書かれた本は「内容の薄い本」として認識されるでしょう。ページ数が500ページくらいあれば書けるかもしれません。
つまり、実用書には読者のレベルに応じた本があります。例えば「これ一冊で全てがわかる」という謳い文句がある本は「初心者向け」であることが多いです。もし中級者や上級者がその本を読んだら低評価になることは言うまでもありません。
実用書の最低限の役割として、読者層のニーズに合った適切な内容が書かれていることがポイントになります。もし著者として実用書の出版を考えているのであれば、その読者を明確にしておくことで、欲しい人に欲しい情報を届けることができるでしょう。
少し話はそれますが、私個人として、実用書を読むのが好きな人が「読書好き」と呼ぶのは少し違和感があります。私はプライベートで実用書を読むのが好きですが、小説は限られたジャンルに偏っています。もし誰かに「読書好きですか?」と聞かれたら、私は「文字を読むのが好きです」と答えます。
著者としてデビューしたい方へ
実用書とは、日常生活を豊かにするヒントを提供する本です。その著者とは「どのような人物」が向いているかと言えば、基本的には“教える立場”の人が良いと思います。実際に現場で教えている人であれば、その経験が活かせることは言うまでもありませんが、その現場での体験談なども交えたリアルな話ができます。
実用書で必要なのは知識や情報と、その著者の経験(経歴)なども重視されます。どんなに良いことを書いている本であっても、それを読んだ読者が、それを信じて行動できなければ意味がありません。そして、読者とは著者の経歴によって行動する確率も変化するものです。
分かりやすくするために「著者の経歴」と言っていますが、正確には「信頼」によって読者が行動します。なぜなら、読者は「この著者が言うのであれば“自分”もやってみよう」と考えます。つまり、著者の信頼性は「リアルな実現性」を感じさせるものでなければいけないということになります。
実用書の出版で得られるメリット
実用書を求める読者とは「何かの知識や情報を求めている人」になります。一般的に知識を教えてくれる人のことは「先生」として認識されやすいです。必然的に出版によってつながった関係性は、読者が生徒、著者が先生、このような構図が完成するのです。
さらに、その本で得た知識や情報に満足した読者は「さらなる情報」を「あなた(著者)」から得たいと感じることが多いです。なぜなら、本になっている知識は一部の情報であり、これだけの情報を持っている人なら「もっと凄いことを教えてくれる」と感じます。
とは言え、あとから出すための情報を出し渋ってはいけません。一冊の本にどれだけ有益な情報を詰め込むことができるかで読者の満足度が大きく変わります。正直、今持っている“あなたの全て”を本に書いたところで問題はありません。なぜなら、あなたが出版で得た新たな知識が生まれているからです。
実際に、実用書を出版するにあたっては調べものも多くなります。そこで、あなたが知らなったことや気づかなかった視点などを吸収することになるのです。著者は「書くこと」だけが役割ではなく、役に立つ情報を集めて集約するという役割もあります。
さらに、読者に教えてもらうこともあります。それは専門的な知識や情報だけではなく、集客という視点を読者から学ぶことになるでしょう。なぜ、その読者はあなた(著者)を選んだのか?それがわかることで、今後の集客にも役立てることができるのです。
商業出版と自費出版
実用書を出版する方法は様々あります。もし商業的に流通する出版であれば「著者の負担のない商業出版」と「商業出版型の自費出版」の二つの選択肢になります。どちらも効果としては同じです。基本的には、著者の負担があるかどうかだけの違いです。
しかし、皆さんもご存知だと思いますが「著者の負担のない商業出版」は現実性が薄い手段になります。なぜなら、出版社に企画書を持ち込んで出版できる確率は「1000人のうち2~3人」程度しかありません。つまり、普通に考えて出版できる可能性が低いのです。
つまり、現実的な出版方法としては「商業出版型の自費出版」になります。基本的には誰でも出版できる可能性が高いです。しかし、こちらは取り扱っている出版社選びに苦労するかもしれません。
例えば、あなたが書いた原稿を「ただ本という形にする」という出版社もあります。それが商業流通していたとしても同じです。原稿に対するアドバイス(誤字脱字チェックや校正は除く)がない出版社は避けておきましょう。
あなたが著者として実用書を出版したい理由とは、本を通じて読者とつながる事だと思います。つまり、第三者のアドバイスや視点のない本は“独りよがりの本”になりがちです。私も数多くの出版に携わってきましたが、著者が提出した「最初の原稿」をそのまま本にできたはありません。
商業出版型の自費出版で考えるべきは、あなたの本をより良くしてくれる出版社を選ぶことだと思います。しっかりと問い合わせや資料請求などをして比較検討していきましょう。自分にとってのベストの出版形式を見つけてください。