「LGBT」が世間を賑わすようになってどれぐらい経つでしょうか。
世界中でセクシャルマイノリティの方々に対する理解が深まってきていますが、まだ完全とはいえないでしょう。現在では性の多様性が広がりをみせ、「LGBTQ+」と複雑になっています。
偏見や差別をなくすためには一人一人の考え方を変えていかなければいけません。そのきっかけとなるのが本です。読んで学ぶことで正しい知識が身についていきます。
この記事では「LGBT」に興味がある方におすすめしたい本6選を紹介していきます。
LGBTについての本を読む
LGBTについて書かれた本は数多く出版されています。
「自分の身近にそういう人はいない」と思っている人もいるかもしれません。しかしセクシャルマイノリティは人口の10%いるとも言われています。もうこの問題は避けては通れない時代になりました。
新しいものを取り入れることに対してネガティブな方もいるでしょう。恋愛は男と女でするものという考えのままでは、グローバルな時代で取り残されていきます。
「自分のセクシャリティで悩んでいる」「友達にLGBTとカミングアウトされた」
このようなとき、どうしたらいいのでしょうか?
私たちはLGBTを学んでいくことが求められています。知識を深めていくことで正しい判断ができるようにする必要性があります。
そのために重要なことは本を読むことです。
LGBTのおすすめ本6選
専門性の高いジャンルのため、どれを選べばよいかわかりにくい面もあります。
その手助けになる入門書中心に6冊紹介します。「LGBT」初心者の方からある程度知識がある人にも満足行く本たち。
きっとあなたの悩みを解決する1冊、知りたい!に答える1冊が見つかるはずです。
1)LGBTを読みとく ─クィア・スタディーズ入門
森山至貴(筑摩書房・2017年)
要約
LGBTをしっかり説明できる人は少ないでしょう。性の多様性が広がりを見せた1990年ごろに「クィア・スタディーズ」が生まれました。クィア・スタディーズはさまざまなセクシュアリティを対象とする学問。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのセクシュアルマイノリティが網羅された「クィア・スタディーズ」入門書です。
批評
この本は性的マイノリティ差別についてLGBTだけにならず、クィア・スタディーズについても学ぶことができる良書です。LGBTに興味を抱き理解を深めようとすると必ずこの問題と触れ合うことになります。セクシュアルマイノリティの歴史とクィア・スタディーズが非常に分かりやすく説明されています。
クィア・スタディーズに関してここまで丁寧に書かれている本と出会ったことがありませんでした。提唱される5つの基本概念を理解するためにこれほど最適な本はなかったです。非常に濃い内容で一気に読み進めることができました。難解とも言われる、クィア・スタディーズの入門書として最適な一冊でした。自分が気づかずしている差別を痛感。また、良心や道徳ではなくて、知識を得ることが重要と説く姿に共感を覚えました。
著者が最後で「テスト前に一夜漬けしている学生を想定している」と書かれていたのも納得の読みやすさ。LGBTの問題は良心や道徳があれば解決するものではなく、それが差別に繋がっていることもあります。無自覚な差別をしないためには、正確な知識を持つことが必要と気づかされる1冊でしょう。
2)はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで(スッキリわかる!)
石田仁(ナツメ社・2019年)
要約
見かけない日はほとんどないLGBTの話題。「LGBTってどんな意味?」「教育現場や法の整備は?」「カミングアウトされたら?」などLGBTにまつわる基礎的な知識からトレンド情報まで知ることができます。性的マイノリティをメインにLGBTビジネスの問題にも切りこんで解説しています。
批評
本書は表紙から分かる通り、解りやすい文章ながら情報量が非常に多いのが特徴。説明が著者だけの見解ではなくデータに基づいているため信頼できます。インプットしていくのは大変ですが、画像も多く不要な説明が簡略化しており読み進めることが難しくありません。堅苦しい本ではなく、BL漫画が紹介されていたり、トレンド情報も載っていたりして、最新のLGBTについて学ぶことができます。性的マイノリティを取り巻く多くの問題について学ぶことができます。
「はじめて学ぶ」と書かれているだけあって、情報が多いですが、気軽に読み進めていけました。読破したころには知識の浅さを思いしり、少しはLGBTの人たちを多少なり理解できるようになりました。LGBTが認知されてきていますが、現実問題で当事者になった人は少ないのではないでしょうか。例えば、「知人からカミングアウトをされたらどう受け止めればいいのか?」経験したことがないからこそ対処法に悩むでしょう。とくに親御さんや教職者は大変参考になる本だと思います。
基礎本としては情報も盛りだくさんで内容がしっかりしています。この本を読めば、LGBTについて見識が広がると思います。いままで気にせずにいた、不用意な差別をしなくなっているのではないでしょうか?LGBTという言葉は知っているけど、もうちょっと理解したいと思ったときに読んで貰いたいおすすめの一冊です。
3)13歳から知っておきたいLGBT+
アシュリー・マーデル:著/須川綾子:翻訳(ダイヤモンド社・2017年)
要約
全米大絶賛でYouTube累計2200万再生超え!「性で悩んでいる人」「LGBTに詳しくない人」に送る入門書&決定版。LGBT(QIA+)について学べます。LGBT+のインタビューを収録、図やイラストが豊富で用語解説付きです。
批評
「LGBT」はレズ、ゲイだけではありません。バイセクシュアル、トランジェンダーやシスジェンダー、バイジェンダー、フルイド/フラックスなどの概念が存在します。一般ではない様々なジェンダーやセクシャルについて、実際の声を交えながら広く紹介されています。
スペクトラムについて書かれている分量が多く、他人に性愛の感情を感じないアセクシャル、感じるゼッドセクシャルなど画像付きで丁寧に解説されています。ユニークなスペクトラムのジェンダー・ユニコーンについても説明されています。
単純に性の多様性に気づかされるわけではなく、性のあり方自体が複雑で、その多様性の中に自分もいることを実感します。人間を二種類に分ける無意味さが痛いほど伝わってきました。実際の声が載っているので内容に説得力を感じました。フルカラーでレイアウトやイラストの見やすさ、平易で分かりやすい文章なので性の悩みを抱える10代でも気軽に読めるのでおすすめです。ティーン向けの本ですが大人でも十分に満足できた一冊でした。
自分にとってのジェンダー又はセクシュアリティ探しをするのに最適な一冊じゃないでしょうか。最後に「膨大な情報を吸収したいま、その情報で何をすべきか、ひと言で表現するなら、ベストを尽くす。」と著者が書いています。自分や他人の性に疑問や違和感を解決してくれるヒントとなる本です。
4)先生と親のための LGBTガイド:もしあなたがカミングアウトされたなら
遠藤まめた(合同出版・2016年)
要約
「LGBTの子どもの悩みをキャッチできる先生になる、親になる」。がキャッチコピー。子供と接する親、教育者に、LGBTを知ってもらう入門書。どのように接したらいいのか?LGBTの知識、法律など幅広く解説されています。
批評
本書は「LGBTの子供たち」に焦点が当てられており、若者のリアルを伝えています。大人にとって子供のLGBT問題はなるべく避けて通りたいもので、見てみぬふりをしたり、いいように解釈したりしがち。親や教育者がすぐに実践できることを「当事者の声」を元にアドバイスされているのが特徴。そうでない人の疑問の声なども書かれていているので客観的に考えることができます。いろんな団体や資料、施設、電話相談先も掲載されています。
「カミングアウトされたら?」どう受け答えをしていいか分からなくなると思います。知識がないまま答えることで余計に傷つけさせてしまうかもしれません。本作では「こうすると良い」と明確なアドバイスで説明されており実用的でした。「誰にも相談できず苦しんでいたら?」子供が親や教師にカミングアウトすることは稀です。大人が早めの段階で気づき理解してあげることで、苦しみから解放できます。理想論ではなく具体的な解決法がデータを元に解説されています。付箋を貼りながら読み進めていきたくなる一冊でした。
学校でのLGBT対応など細かく描かれています。マイノリティだからではなく、理解することが重要と強く思わせてくれる本です。大人が子供たちに、楽しく生きることを伝えることができるようになればどれだけ素晴しいことでしょうか?親や学校関係者に強くおすすめしたいです。
5)マンガでわかるLGBTQ+
パレットーク:著/ケイカ:著&イラスト(講談社・2021年)
要約
LGBTQ+のギモンに答える入門書。LGBTQ+の解説から、体験談が教えるさまざまなシチュエーションを紹介。男らしさ?女らしさ?多様な性と社会の問題を漫画で分かりやすく説明しています。
批評
LGBT問題は複雑で内容も難しく理解をするのが大変です。本作はほぼ漫画で書かれているので非常に分かりやすいです。内容も薄っぺらではなく、実際の声を中心に紹介されているのでリアリティがあります。LGBTQ+の初歩的な質問から少し踏み込んだ内容まで充実しており、要点や論点がしっかり書かれています。LGBTQ+は遠い世界の話じゃなく、「自分にも関係するんだ」ということをわかりやすく教えてくれるでしょう。
社会や周りの偏見によって、多様な性自認や性的指向を持つ人たちどんな気持ちで生活をしているのか?何気ない会話で相手を傷つけた経験は誰にでもあると思います。知らず知らずに土足で踏み込んでいたのでは?と気づかされます。とくに「11人に1人はLGBTQ+の人である」という文章が強く心に刺さりました。この数字は左利きと同じ割合みたいですね。身近な人、今まで出会ってきた人の中にもLGBTQ+がいるかもしれないと気づかしてもらいました。簡単に読める漫画でありながら心に残る内容が多く感動しました。
漫画だからとても読みやすく、内容がスラスラ入ってきます。ここが最大のメリットでした。この本でLGBTQ+について興味が沸いたら、今回紹介している他のも読んでみてはいかがでしょうか?また、子供でも簡単に読めるので年頃のお子さんがいる親御さんはプレゼントしてLGBTについて学んでもらうのもいいと思います。LGBTQ+入門書として万人におすすめできる良書です。
6)LGBTとハラスメント
神谷悠一:著/松岡宗嗣:著(集英社・2020年)
要約
2020年6月1日に施行された「労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)」この中には「SOGIハラ」も含まれています。性的指向・性自認を表す人たちに対する差別や嫌がらせがSOGIハラ。本書では「性の多様性」についての基礎知識から「SOGIハラ・アウティング防止」法、「人事・労務制度」について紹介。
批評
自然と身についてしまったセクシャリティマイノリティに対する古い考え方。LGBTによくある勘違いは多くの人たちが当たり前だと思っていることです。本書では「この言い方は傷つけている可能性がある」など、誤解・偏見について、優しく、とても丁寧に説明してくれています。
一般的な「LGBT」本に書かれていて、基礎的な知識からよくある誤解など勉強になりましたが、本格的に法規制の話を学べる本でした。後半のメインである法制度については法律用語がたくさんあり、少し読み進めるのが大変でしたが、法的根拠やよくある「勘違い」パターンを理解できたのは良かったです。セクシャリティマイノリティが特別な存在ではない社会に法整備がとても重要だと実感しました。法律、労務関連の取り組みを題材にしているLGBT本は少ないので、これらに関する情報を知ることができよかったです。
人とコミュニケーションを取る上で思いやりがとても大切です。声のかけ方一つでも相手に辛い思いをさせていることがあります。主に職場でのハラスメントを想定して書かれているので、「ウチの職場にLGBTはいない」と言い切る人ほど読んでみることをおすすめします。会社で管理職に就いている人は働きやすい職場を築くためにぜひお手に取ってみてください。
玄武書房のLGBT関連書籍
となりのLGBT-初心者向けQ&A-
金城克哉
プレスリリース:https://genbu-shobo.com/pr20220626/
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4909566538/
楽天ブックス:https://books.rakuten.co.jp/rb/17195251/
まとめ
今回紹介した本はどれも一貫して、正しい知識を身に着けることが大事と説いています。同情より正確な知識を持って接することが大切です。
差別するつもりがなくても差別は起きます。悪気がなく行っている差別は悪意ある人よりたちが悪いともいえます。なぜなら自分で気づいてないのだから、直す気持ちになりません。
相手の良心に問いかけることができないのです。正しい知識があればそのような悲劇が起こりません。
今回紹介した6冊はどれも素晴らしくおすすめできる良書です。ぜひ気になったのを1冊手に取って読んでみてください。