自叙伝を作成したい人たちが知っておくべき【厳守5箇条】

自伝・自叙伝の作成において“最低限”抑えておきたい【重要な5箇条】があります。
せっかく自叙伝を作成することを決断したのなら、そのクオリティの維持も一緒に考えてください。ただ書きたいことや自分の歴史を記すだけが自叙伝・自伝ではありません。そこには本としての『役割』がありますので、読みやすさや内容の濃さも意識していきたいところです。

<自叙伝作成で厳守すべき5箇条>
第1条:目的を明確にする
第2条:読者を意識して書く
第3条:最低限必要な情報
第4条:恥部は書かない
第5条:短期間で書き上げる

第1条:目的を明確にする

当たり前のことですが、この“当たり前”を途中で忘れてしまう人がいます。何を目的として書き始めたのか?自分で決断して書き始めたのだから忘れるはずがない、そのような思い込みで作品の出来が大きく変わっていきます。

自叙伝を作成しようと思った目的(例)
・子供や孫たちに伝えたいことがある
・自分の経験を家族に残したい
・自分の功績を形として残したい
・自分の経験や考えを広めたい
・困っている誰かの役に立ちたい

もちろん、ひとつではないかもしれません。いくつかの要素があっても大丈夫ですが、あなたの自叙伝を作成する目的を必ず書き留めておきましょう。その目的は途中で書きあぐねたときに『指針』になってくれます。例えば、その作成の目的が『子供たちに残したいこと』であれば、文語体の丁寧語で書くよりも、口語体や“あなたらしい言葉”で書いた方が伝わりやすいです。特に一般読者が読むものでなければ、どんなに汚い言葉であっても、家族には伝わる言葉(文章)となるでしょう。

この第1条は、自叙伝・自伝だけではなく「本」を作成するうえで最も重要なことだと思います。何を伝えて、何を感じてもらいたいのか、結果として“読者にどうなってもらいたいのか”まで考えておかなければ、せっかくの本の役割を果たすことはありません。自叙伝・自伝であっても、その目的を明確にしておくことで【あなたの想いが伝わる本】になります。

第2条:読者を意識して書く

まず上記で目的を確定することによって、その目的に合った『読者』が見えてきます。その読者は「家族や親族」であったり、商業流通をするのであれば「一般読者」であったり、自叙伝の目的によって変化するものです。もしかしたら、作成前には「家族や親族」に伝えれば満足だと思っていたのに、途中から「せっかくだから、いろんな人に見てもらいたい」と考えたのであれば、今書いている自叙伝は見直しが必要になります。

つまり、読者を意識した書き方というものが重要になります。正直、自叙伝・自伝の作成において、家族向けに書いたものを、急に(おもいつきで)一般向けに変更したものは作品としてのクオリティは低いものになります。なぜなら、そこには著者の甘えがあるからです。家族という、いわゆる“自分の存在が認められている小さな社会”において、あなたの意見は通用しますが、それが一般社会に通用するとは限りません。

あなたが著名人であれば別ですが、一般的に『赤の他人』が言うことは戯言でしかありません。その戯言を戯言でなくするためには、しっかりと『本』としての構成を考えて、単なる自分の歴史や経験を記す自叙伝・自伝の枠を超えた『作品』として完成させる必要があります。

それには文章としての読みやすさ、全体の構成、想いを伝える説得力、他にも考えるべきことが多くあります。今考えている自叙伝が家族向けに作成を予定しているのであれば、特に気にすることはありません。あなたの伝えたいことを、どんな書き方でも何を伝えても良いと思います。

<読者を意識した内容>
・読みやすい文章
・口語体、文語体
・ですます調、である調
・伝える内容と伝え方
・詳細の必要性(家族向けなら省ける内容もある)
・方言の仕様(一般向けなら注意書きも必要)
・誤字脱字 など

第3条:最低限必要な情報

自叙伝の作成において、最低限必要な情報とは何でしょうか?
すでに答えは伝えているので、勘の良い方であればお気づきだと思います。そうなんです。読者によって「最低限必要な情報」は変化していきますので、まずは共通して必要な情報を取り上げていきたいと思います。

・あなたの紹介文(主観的、客観的)
・その自叙伝で最も伝えたいこと
・ページ数に余裕があれば年表や略歴 など

やはり、自叙伝の早い段階で『伝えたい想い』は言葉(文字)にしておく必要があります。もし、自叙伝・自伝を全て読み終われば「自分が伝えたいことを感じてもらえる」はずというエゴ的な考えはありませんか?そのような考えで書かれた自叙伝は最後まで読まれることすら難しいでしょう。

自叙伝に関しては、よほどの有名人や著名人でなければ「他人の人生」を知りたいと思う人はほとんどいません。つまり、その本(自叙伝)を読むことで『何を得られるのか』を先に伝えていくことで、最後まで読んでもらえる可能性が高まります。あなた自身が読者の立場になって考えてみてください。誰かも知らない他人の人生を、何の理由もなく読もうと思うでしょうか?

つまり、自叙伝の文章を作成するうえで重要なのは『読者の興味付け』ということになります。この本を読んだら「もしかしたら自分にプラスになるかもしれない」と感じてもらえるような仕掛けや書き出しが必要になります。先に述べたように、読者が誰かによっても変わってくると思います。

<家族向けの自叙伝作成時の注意点>
・継承してもらいたい内容を明確化する
・伝えるべき人に伝わる方法を考える
・自叙伝の保管方法も考えておく

<一般向けの自叙伝作成時の注意点>
・どんな人が何の目的で書いたのかを伝える
・伝わりやすい構成と文章を心がける
・家族が恥ずかしくない内容にする

第4条:恥部は書かない

ほとんどの自叙伝・自伝作成において問題になることは少ないです。なぜなら、基本的に『自分の恥部』を晒すことまではしないからです。しかし、なかには「自叙伝」という言葉や響きを勘違いして、自分の考えや体験を惜しげもなく、全てを明かそうとする人も少なからずいます。

たしかに、他人の恥部ということで、ひとつのエピソードしては面白い一面もあります。しかし、本来の目的とは関係ないものは『単なる恥部』であって、むしろ目的を達成する邪魔になる可能性もあります。例えば、厳格な頑固親父として生きてきた人が、若気の至りで「人としてのマナー」を逸した行動をしていたなら、これまでに築いてきた威厳は失われるかもしれません。

もっと変な話で言えば、自分の性癖を書いてしまったら、正直、家族であっても(むしろ家族の方が)気持ち悪いと思われるでしょう。全てをさらけ出すのが自叙伝ではありません。書かなくても良いことは書かずに、伝えたい本来の目的を達成するために必要なことを書いてください。

たしかに、面白い自叙伝には失敗談などもあり、それが小説における「起承転結」のような盛り上がりのある作品になる可能性もあります。しかし、その失敗談は「自叙伝において必要のある失敗談」にしてください。あなたの存在(価値)を落としてしまうような赤っ恥エピソードは不要です。一般的に言われる「面白い話」というのは、そういうもの(作品)ではありません。

第5条:短期間で書き上げる

さて、実際に自叙伝を作成するにあたり、やはり【完成させる】ことが大切です。おそらく、自叙伝や本を書きたいと思っている人たちの7割近くは書かずに(書けずに)後悔してしまっています。そして、死ぬ間際になって、あのとき書いておけばよかったと思うことになるでしょう。

自叙伝に限らず、何かを表現したい人は、できるうちに表現をしておくべきです。年齢と共に記憶も薄れていき、行動力や発想力もなくなっていきます。結局、やりたくても出来ない時間がやってくるのです。そこで後悔してもしきれないのは、これまでの経験で分かっているはずなのに行動できない・・・そのような人たちを多く見てきました。

ここで私からのお願いです。
ぜひ【3ヵ月を目安】に書き上げてください。

そのクオリティは問いません。一度、全体の流れを掴む(完成させる)ことが大切です。実際のクオリティアップはあとから自然とやりたくなります。書いたものを読み直していくと「もっと」読みやすく、分かりやすく、読者の存在を意識するようになっていきます。それだけでも、プロの視点がなくても、ある程度の品質向上ができてしまうので不思議です。

もちろん、自叙伝の作成をしていくなかで、それを一般読者にも届けたいと考えるようになったら、やはりプロの視点は必要になります。出版を依頼する業者探しの際には、そのようなアドバイスをしてくれる業者を選んで行きましょう。ただ本(形)にするだけの出版では、誰にも読まれることはありません。

自叙伝作成の注意点まとめ

自叙伝・自伝の作成そのものは難しくはありませんが、私は「誰もがデキる」とも思っていません。その想いの強さと行動力、そして決断力のある人でなければ自叙伝の作成は無理だと思います。

家族向けの自叙伝作成という意味では、出版までは行かなくても、ノートやパソコンに記しておくだけでも家族にとっては自叙伝的な役割を果たします。しっかりご自身の目的を考えていけば、どのような自叙伝の形が合うのかも見えてくると思います。

もし一般読者向けに自叙伝を作成して出版したいのであれば、プロの視点を入れることで『作品』としてのクオリティに到達することできるでしょう。本を商業流通することは“ある種の責任”が生まれます。知らない誰かに、あなたの人生(目的)を正しく理解してもらえるように『伝える技術』が必要です。そして、読者を裏切らない作品を目指す責任や必要性があります。

自伝・自叙伝を本気で商業出版したい方へ