【保存版】商業出版とは?5つの出版形式の特徴とメリットを分かりやすく解説

商業出版とは、出版社側が制作費をすべて負担する出版になります。ただし、現在の状況を考えると“様々な意味”で捉えられる言葉であることも認識しておいた方がトラブル回避につながります。これから自分の本を出版したいと考えている皆さんの選択肢を正しく理解していただくために、5つの出版形式もご紹介したいと思います。

そして、過去にお付き合いのない出版社からの(著者負担なしの)商業出版は【かなり困難】であることは先にお伝えしておきます。そのような状況であっても出版に向けて、どのような選択肢があるのかを知っておくことで商業流通できる出版の可能性は広がります。自分が何を目的として「出版したい」のかということも明確にしておく必要があります。

商業出版とは?

一般的には「出版社側が制作費を負担する出版形式」のことですが、現状では一概にその意味だけとは言い切れません。どのような業界でも言葉や常識などは時代によって変化するものなので、その利用者(著者・作家)も知識や情報をアップデートする必要があります。

商業出版の現状について

商業出版は、基本的には『出版社が全額負担をする出版』のことを呼ぶことが多いです。しかし、その本質は「商業的な出版」もしくは「商業を目的とした出版」と考えると、最終的な目的は本の販売による『商業的な利益を目的とした出版』ということになります。その出版費用の負担が誰であれ、最終的なゴール(目的)が合致すれば【商業出版】と言えるかもしれません。

実際に、著者は「(著者負担なしの)商業出版」として応募したはずなのに、結果的に「企画出版」や「共同出版」に誘導されることが多いのが現状です。つまり、業界的には広義での「商業出版」が浸透している(もしくは大きな意味で「応募者=出版を希望している人」と捉えている)と考えるのが良いでしょう。また応募する著者側も、そのような状況を理解しておく必要があります。

5つの出版形式

商業的に本を販売する方法(出版)として、大まかに以下の5つのパターンが存在します。
・商業出版(著者負担なし)
・共同出版
・企業出版
・自費出版
・個人出版

それでは、それぞれの特徴を細かく見ていきましょう。

商業出版(著者負担なし)

現状で募集されている「著者負担なしの商業出版」の数は少ないです。何も募集の告知をしていない出版社に無理やりメールを送ったとしても、基本的には返信がないか、当然のように「現在は受け付けておりません」という形式的な返事が来るだけです。実際に企画書が読まれることはありません。もし本気で持ち込みを考えているなら、もっとリアルかつ強引な“担当者との接近”を試みた方が可能性は高まります。

例えば、無名の著者(過去の出版実績がない・タレントやインフルエンサーではない等)の場合、電子書籍による商業出版であれば可能性はあります。この場合、出版社だけに頼らずに著者自ら告知やアピールを頑張ることで、その次の新たな出版へつながる可能性も期待できます。今の時代、著者は書くだけではなく、出版後の販売戦略も考えておいた方が良いでしょう。

企画出版とは、この「商業出版」と同じ意味になります。ただし、出版社によっては下記の「共同出版」のようなカテゴリとして扱われているところもありますので、契約前にしっかり確認しておく必要があります。先にお伝えしたように、時代と共に言葉の意味が変化していることもあるため、確認せずに「著者負担なし」と思い込んでしまわないように注意してください。

共同出版

共同出版は、著者と出版社が製作費を折半したり、その一部を出版社が負担する出版になります。その呼び方は様々で「共同出版」以外に「協力出版」やその他の独自の名称で呼ばれることもあります。出版社が負担するとは言っても、基本的には『自費出版』と変わりはありません。あくまで格安な自費出版のひとつと考えておけば良いと思います。

ただし、誰もが出版できる自費出版ではなく、その書籍の企画内容によって採用されます。出版社や担当者が「もしかしたら売れるかもしれない」という可能性を感じた企画書の場合、多少のリスク(出版費用の割引)を負ってもよいという判断に至ります。それでも著者の負担する金額で、ある程度の制作費はペイできているので、出版社側がマイナスにはなることはほとんどありません。

例えば、知名度のない方の『単なる自叙伝』のようなものが共同出版として採用される可能性は低いです。共同出版という名前の「完全自費出版」を行っている出版社もあるため契約は慎重に行いましょう。もし、著者の負担が「50万円を超えるような共同出版」を持ちかけられたら注意が必要です。もちろん、初版の部数によっては金額が高くなりますので、部数と金額の目安に関する情報は集めておきましょう。

企業出版

企業出版は、企業(会社)もしくは代表が企業イメージの向上や製品のアピールのために行う出版になります。当然ですが、個人で出版する場合には対象とならないため選択肢から外れます。いわゆる『企業の広報活動』の一環として利用されることが多く、その形態も雑誌タイプや単行本タイプなど様々あります。

この名称に関しては出版社独自のものが多く「カスタム出版」や「ブランディング出版」と呼ばれることもあります。一般的に企業(会社)を対象とした出版であるため、その出版費用は個人で出版するよりも高額になります。ちなみに、当方で扱う格安の「ブランディング出版(審査あり)」は企業のみならず、個人(専門家や講師などが対象)のブランディングに活用いただけるものになっています。

この企業出版は様々な効果が期待できる反面、その制作自体がかなり難しいです。企業(本体)と企業の担当者、編集者など関係者が増えてしまうため、編集作業において意思の疎通がうまくいかなかったり、スケジュール調整が困難になりがちです。そのため企業出版の実績が多く、そのような調整に慣れた出版社を選ぶべきでしょう。

自費出版

著名人や名のある専門家以外、過去に出版実績がない方などが出版したいと考えた場合の選択肢として、この『自費出版』が主流になります。もちろん、企画出版(商業出版)の可能性はありますが、かなり苦戦するため出版できずに諦める人がほとんどです。本気で出版したいと考えているのであれば、ひとつの選択肢として検討してみる価値はあります。

この自費出版の費用に関しては“ピンキリ”と言えます。2000部で250万円という高額なパターンもあれば、少部数で5~10万円前後で出版できるパターンもあります。もちろん、それらの金額には意味があります。しっかり担当者がついて構成や編集を行ったり、原稿の手直しやアドバイスがあったり、書店に並べたりとそのサービス内容によるので、必ずしも金額だけで決めるものではありません。

ただし、自費出版にはトラブルがつきものです。正直、自費出版で売れる部数は期待できるものではないかもしれません。特に書店に並べるパターンの自費出版においては、著者の知らないうちに在庫処分されてしまうことがほとんどです。もちろん、印税に関しては「印刷部数」によって生じるわけですが、その部数が「すべて売れたわけではない」ことを理解しておく必要があります。

個人出版

今の時代、出版社を通さずに「個人で出版する」ことも可能です。インターネットおよびパソコンに慣れている方であれば、電子書籍だけでなく様々な選択肢があります。例えば、「MyISBN」はお手軽なオンデマンド出版が可能ですが、原稿や表紙などすべてを著者が準備しなくてはいけません。サイト側から要求される仕様を満たすためのスキルは必要になります。

特に、個人出版で利用されるのは電子書籍です。Amazon(Kindle)などが有名で利用している方も多いと思いますが、こちらも基準に沿ったデータの準備が必要になるのでパソコンスキルは必要になります。また単なる文字原稿のデータは比較的簡単にアップできますが、イラストを入れたり図形を配置したりする場合には電子書籍の仕様を理解する必要があります。

そして、個人出版には大きなデメリットが存在します。気軽に低価格での出版が可能な個人出版ですが、やはり個人レベルで作った低品質の書籍になりがちです。通常の出版社経由の書籍について、多くの場合は編集担当者が存在して、彼らの腕によって「読まれる書籍」にレベルアップしてくれます。そのような第三者(プロ)が介在する出版が本来は望ましいです。

商業出版は「企画書」がカギを握る

商業出版の第一段階として「企画書」の提出が欠かせませんが、その企画書が全てに目を通されることは少ないです。まず企画書において、たった数行に目を通すだけで、その著者の文章レベルがすぐに把握できます。その時点で、審査から落とされることも多いのが現状です。

担当者に選ばれる企画書とは?

商業出版の企画書のどこを見て採用するかを考えてみましょう。正直なところ、当方に送られてくる企画書でも「独りよがりなもの」が散見されます。それは、企画内容(テーマ性)だけではなく、文章の書き方であったり著者の目線であったり、様々な部分で共感しにくい部分が多いです。まずは【読まれる企画書】を作ることが重要に思います。

それでは実際にどのような企画書が読まれるのか、という視点から以下のようなポイントをまとめてみました。これから商業出版の企画書を作成しようと思っている著者の方々の参考になれば幸いです。あくまで最低限の条件みたいなものだと思ってください。採用されやすい企画書の書き方などは書籍などもあるので、ぜひ事前にしっかり勉強してから挑戦してください。

・読みやすい文章

企画書は箇条書きや短文の部分も多いとは思いますが、それだからこそ「著者の文章力」が見破られやすいとも言えます。企画書は「個性」よりも「読みやすさ」を重視してまとめていく必要があります。多くの編集担当者は仕事に追われていますので、ダラダラと書かれたような企画書を読む気に慣れません。主となるテーマを端的に伝えることを一番に考えて、一度書いた企画書を見直してみましょう。

・言語能力が高い

言語能力と言っても、ただ難しい言葉を伝えばよいわけではありません。特に専門的な内容(テーマ)の企画書の場合であればあるほど、専門用語ばかりにならないように注意が必要です。なぜなら、編集担当者がそれらの専門用語を知らない(ほとんど知らないと思った方が良い)場合、何を言っているのかが理解できないからです。ポイントは「クセのない文章」であり、同じ表現を避けたり、文体の統一などは必須です。

・企画内容(テーマ)が面白い

やはり差別化できるテーマであることが重要です。しかし、よくあるのが「他にない内容(テーマ)」と思い込んでいる著者が多く、それを自慢げに企画書に綴りすぎてはいけません。専門家ではない担当者からすれば、過去に出版されている書籍などを調べると「似たような書籍」がいくつも見つかるため、断言などの強すぎるアピールは逆に信頼度が下がってしまうリスクすらあります。

・著者の人柄に惹かれる

文章(企画書)には「人柄」がにじみ出てきます。特に、圧の強さを感じる企画書の場合、編集担当者によっては採用を見送ることもあります。それは著者との人間関係の構築が難しくなりそうだと判断してしまうからです。著者とは出版までの長い付き合いになるので、気難しそうな著者を担当するのはリスクがあると感じるので、多少の興味がある程度の企画書をわざわざ選ぶことはないでしょう。

企画書の書き方のポイントまとめ

上記のことから、読みやすい文章で、自我を出しすぎず、主となるテーマを端的にまとめた企画書が好まれます。著者は出版に向けた情熱を企画書にすべてぶつけようとしますが、それが熱すぎると「独りよがりの企画書」になってしまうリスクがあることを理解しましょう。過去に付き合いや接点のない編集担当者との温度差は考慮しておく必要があるということです。

大前提として、企画書では「テーマ性」と「著者の人間性」が見られているということをお忘れなく。先にお伝えした「読みやすい文章」などは人間性に含まれてくるものです。企画書を読む相手(編集担当者)への配慮をすることで、読みやすい企画書が完成することは間違いありません。テーマ性に関してゃオリジナリティの高いものであれば、基本的に自然と「差別化」もできるので問題ないでしょう。

商業出版の企画書の書き方について、もっと詳しく知りたい方は(有料ですが)マンツーマン対応も行っています。お気軽にご連絡ください。

出版することのメリット

商業流通する書籍を出版することで、いくつものメリットを感じられるはずです。著者によって何がメリットになるかは異なりますが、本によって読者に与える影響力や共感力は共通したポイントだと思います。
・人生に影響を与える
・ブランディング効果
・テレビ出演が決定!?
・夢の印税生活!?

自分の経験が誰かの生きる糧になる

皆さんもこれまでに読んだ本で人生に影響を受けたことがあると思います。同じように、あなたの書いた本が読者の人生に影響を与えることもあります。本(読書)の面白いところは、他人の人生や経験を疑似体験できることです。一回の人生で体験できない(もしくは似たような)経験から多くの学びがあり、読者の人生を豊かにするキッカケになることまであります。

ブランディング効果で専門家として認知される

商業出版(ここでは出版社経由の出版全般)は、ユーザー(読者)から第三者に認められた出版と認識されます。一般的にブランディング効果が期待できる手段は「第三者からの認証(お墨付き)」であるため、まさに商業出版はもってこいの手段と言えるでしょう。また書籍に書かれていることに共感を得られたら、その読者はあなた(著者)のファンになってくれます。

メディア露出が増えるのは理由がある

出版したことで得られる最大のメリットと言えるかもしれません。あらゆるメディア露出につながる可能性があります。なぜなら、商業流通する書籍は誰もが手に取れるものなので、いろんな媒体の編集担当者などが目にする可能性があります。実際に、それまで雑誌やテレビで取り上げられなかった人でも、出版後に雑誌掲載をきっかけにゴールデンタイムのテレビ出演につながった例もあります。

夢の印税生活は遠い道のり

現状では年間7万冊の新刊が生まれています。電子書籍を入れると、その倍近くになる可能性もあります。つまり、あなたの本のライバルは数えきれないほど存在するということです。例え、ジャンルを絞って考えてもライバル書籍は多いはずです。著名人でさえ数百部で終わってしまうことも多々ある世界なので、印税生活なんて無駄な妄想は考えないようにしましょう。売れたらラッキーくらいの感覚が良いと思います。

商業出版のハードルについて

年間7万冊の書籍のうち、企画書の持ち込みによる出版(共同出版を含む)は5%にも満たないと思います。一般的に商業出版として採用される確率としては「1/1000」程度とまことしやかに言われることもありますが、それは企画書の書き方が間違っている(選ばれる前の段階)ものも含みます。実際には、差別化できるテーマ性があるものなら、出版社と扱うテーマの相性などによって可能性はあります。

出版業界の現状を把握すれば納得

なぜ商業出版のハードルが高いのかと言えば、単純に「本が売れない時代」に突入しているからです。この「本」には電子書籍も含まれますが、本が売れないというよりも全体的な読者数が減っているという考えの方が正しいと思います。それは昔に比べて、本を読む以外の娯楽が数えきれないほどに存在するためです。そんな業界では、無名の新人作家の本をつくるよりも、実績のある作家に書いてもらった方がリスクがないわけです。

商業出版に至るための条件を考える

これから商業出版の持ち込みをしようと思っているのであれば、最低限の条件をクリアしたいところです。まずは独りよがりの企画書にならないように注意してください。出版社(編集担当者など)が何を求めているのかを考えていくことも大切です。

<最低限の条件>
・差別化できるテーマを考える
・読んでもらえる企画書を書く
・文章を磨く努力を続ける

商業出版の問題点

企画書が採用されないというハードル以外でも、商業出版にはいろんな問題があります。

そもそも企画書を受け付けていない

現実問題として、企画書の持ち込みをできる出版社は数に限りがあります。ネットで公表されているもので(そこそこ有名な50社中)8社ほどありますが、医療系のみなど専門的な出版社も含むので、実際に“あなた”の企画を持ち込めるのは多くても3社程度だと考えるのが良いでしょう。もちろん、企画書のデキが悪ければ採用されることはありません。

・ダイヤモンド社(郵送のみ)
・ディスカヴァー・トゥエンティワン
・あさ出版
・ぱる出版
・かんき出版
・明日香出版社
・KKロングセラーズ(自費出版への誘導もあるかも)
・文芸社(自費出版への誘導もあるかも)
※調査時点での出版社なので、実際には受付していないこともあります。

結局、自費出版に誘導されがち

上記の出版社のなかにもありますが、実際の出版の話となると「自費出版」へ誘導されることも多々あります。それぞれの出版社が自費出版ブランドなどを展開していることも多いので、そちらの誘導窓口として商業出版を募集している可能性もぬぐい切れません。とはいえ、自費出版を選択するかどうかは利用者の判断になるので大した問題ではありません。

ただし、企画書の内容を褒めちぎって自費出版に誘導するような営業を受けたとすれば、それは間違いなく『誘導窓口』だと言えるでしょう。それだけ褒めるのであれば商業出版(企画出版)として採用されるはずです。出版業界における闇部分のある自費出版はトラブルも多いので注意が必要になります。すべての自費出版が悪いわけではないので、事前の確認さえしっかりしておけば問題ありません。

もし出版できても売れない現実が待っている

もし無事に企画書が採用されて商業出版できたとしても、その本が売れるとは限りません。むしろ「売れなくて当然」くらいの認識でいた方が良いでしょう。売れるためには様々な戦略や時代の流れだけでなく、かなり運の要素も関係してきます。たまたまメディアで取り上げられてバカ売れする書籍も稀にですが存在します。基本は「本が売れない時代」であることをお忘れなく。

何より著名人やタレントさんの本でも1000~2000部、下手すると数百部で終わることもあります。これは印刷部数ではなく『販売数』のことです。通常の商業出版としては、少なくとも5000部以上売れる可能性があると判断された書籍になると思います。結果的に、すべて売れなくても著者の皆さんは気にしないでください。あくまで商業出版は出版社側の判断で採用したものなので、本の売れ行きは著者の責任ではありません。

自分の書籍を出版するには?

最後に、あなたが『本を出版する目的』を考えてみてください。

あなたは“なぜ”出版したいのか?

本を出版することで自分のメリットは何か、何を求めて出版したいと思っているのか、それらを改めて考えてみてください。商業出版のハードルは高いですが、まずは挑戦してみるのが良いと思います。実際に行動してみないと、その結果(可能性)も分かりません。

もし3社くらいに企画書を持ち込んで、それが駄目だった場合には企画書およびテーマに問題があるかもしれません。例えば、同じ内容で作り直した企画書を断られた出版社に持ち込むことも可能です。ただし、採用される可能性はかなり低いことは覚悟しておく必要があります。その場合、出版社とテーマの相性が悪かったと思ってください。

現在、本の出版は様々な形で実現可能です。もちろん、ベストは著者の負担がない商業出版(企画出版)だと思いますが、自費出版であっても『目的』によっては同じ効果を得られることもあります。ブランディング効果や人生の記録(誰かの助けやキッカケにもなる)などであれば、本を出版したという事実がプラスに働くと思います。

自費出版や個人出版を検討しよう!

商業出版の可能性が薄くなった際に、自費出版や個人出版の検討もしていきましょう。あなたの目的が出版するという事実で叶うのであれば、個人出版よりも【出版社経由の自費出版】をおすすめします。やはり、出版社という第三者が認めた書籍であることのブランディング効果は大きいです。しっかり自分の目的やコストに合った手段を選んでください。

ブランディング出版について
自費出版について