高齢者や障害がある方の家に行き、介護や生活支援する仕事であり、「食事、入浴、排せつから掃除、洗濯」まで多岐に渡ります。このように誰もが厳しい仕事と考えているからこそ、求人を出しても応募者がいません。給与面など待遇面がいいのであれば働く人も増えるのでしょうが、低賃金で重労働と言われている敬遠されやすい仕事です。
しかしながら、訪問介護は社会的に必要な仕事です。少しでもホームヘルパーに興味があったり、利用を考えたりしている本人や家族は訪問介護系の本を読むことで情報を得てイメージしやすくなります。
訪問介護の世界を知るために役立つ本がたくさん出版されています。今回は訪問介護のおすすめ本を紹介していきます。
訪問介護の世界は厳しい?
訪問介護員はホームヘルパーや介護ヘルパーとも言われています。働いている人たちは自分たちのことを「ヘルパー」と呼ぶのが一般的です。
2013年の法改正から訪問介護員になるには「介護職員初任者研修」を修了する必要があります。
上位職の「護福祉士実務者研修」「介護福祉士の保有者」もホームヘルパーとして働く事ができます。似たような仕事に「訪問看護」がありますが、こちらは点滴や注射などの医療行為を行うことができます。
訪問介護の仕事内容は利用者の自宅に行き、身体介護と生活援助を行います。身体介護は「食事介助、入浴介助、排せつ介助」などで、生活援助には「掃除、洗濯、通院」などがあります。
報酬面は平均年収が約300万円で月に直すと25万前後。「サービス提供責任者」など、キャリアアップをすると給料は上がっていきます。事業所によっても待遇が変わってきます。
利用者を支えることで得られる達成感や喜びなど、さまざまな魅力がある仕事で、誰もがいつかはお世話になるかもしれないのがホームヘルパー。高齢者や病気の方にはなくてはならない重要な仕事です。
訪問介護に関するおすすめ本:書籍4選
訪問介護について書かれた本は、ホームヘルパーに向けたものから、エッセイ本など誰が読んでも楽しめる内容までさまざまです。
ここでは厳選した4冊を紹介していきます。レビューを見て気になったものがあれば、ぜひ手に取ってみてください。
1)介護ヘルパーはデリヘルじゃない―在宅の実態とハラスメント
要約
数多く出版されている訪問介護系の本の中でも目に留まってしまう内容のタイトル。いままで、この暗部について書かれている本はあまりなかったです。ヘルパー歴28年の筆者が指摘する内容は目を染めけることができません。ハラスメント問題に焦点を当てた一冊で訪問介護の問題と実践的な対処法も教えてくれます。
批評
本書の感想としては、「ヘルパーはなんでもいうことを聞いてくれる」存在でないことを強く痛感しました。介護サービスを利用する際は正しく理解しなければいけないことを気づかせてくれました。介護ヘルパーに頼めることは主に身体介護や生活援助に関すること。ヘルパーさんは家政婦ではないのでなんでも頼めるわけではありません。なかでも本書の根幹であるセクハラとパワハラは目を染めたくなる描写もありました。密室環境でのサービスだから起こる確率が上がるのでしょう。これが施設なら利用者も理性が働く可能性が高いのかもしれません。訪問介護中に起きるトラブルは実体験を元に書かれているのでリアリティがひしひしと伝わってきました。
利用者は身体の自由が効かない状態だからこそ精神状態にゆとりがなくなっています。そのため介護ヘルパーに強く当たったりすることもあると思います。福祉の世界だから少しぐらい我慢しないといけないという風潮もあります。また介護は、利用者と身体のふれあいが必要になってきます。セクハラの境界線が曖昧とも言えます。難しい問題で軽々しく意見を言いにくいですが、ホームヘルパーが経験しているセクハラやパワハラの実態を知ることができる良書です。
2)中年マンガ家ですが介護ヘルパー続けてます
著:吉田美紀子(双葉社・2018年)
要約
40代バツイチ一人暮らし女性マンガ家が訪問介護のヘルパーに転身。訪問介護から発達支援事業所、看護助手、移動支援、介護老人福祉施設の体験を漫画にしました。「月刊まんがタウン」での連載をまとめた一冊。前作は「40代女性マンガ家が訪問介護ヘルパーになったら」。他に「消えていく家族の顔 ~現役ヘルパーが描く認知症患者の生活~」も出版されています。
批評
40代漫画家が訪問介護の世界に飛び込んでリアルな体験を伝えています。人と人が繰り広げるドラマは大変なところからホロっとするまでさまざま。漫画で描かれているのでシンプルで読みやすい内容になっています。キレイごとばかりじゃなく苦労の部分を避けず書かれているので、生活のために訪問介護を始めた著者の苦悩がダイレクトに伝わってきます。
本職が漫画家歴20年のベテランなだけあってとても読みやすかったです。結構ハードで重くなるエピソードもあるのですが、ほんわかした絵のおかげで手を止めることなく、読み進めることができました。前作は1ページに4コマ漫画が1つ掲載されているだけでしたが、本作では2つに増加したのでコスパが良くなったと感じました、あとは4コマ漫画にプラスして文章で補足などあればより内容が濃くなったかもしれません。ただ漫画という読みやすさをコンセプトとしているのなら、これはこれでアリかなと感想を持ちました。
介護の世界に興味を持って本を購入しても、教科書的な内容だと、なかなか頭に入ってきません。イメージしにくい部分も本書はコミックエッセイなので、サクサク理解できていきます。現役で働いている方の本なので現実味があって当たり前ですよね。介護の世界を知る入門書として最適な一冊でおすすめします。
3)訪問介護事業は消滅する―介護の神髄
著:堂前雄平(文芸社・2021年)
要約
著者は市議会議員を2期務めた後、介護保険制度が変わったのを機に介護事業に進出。夢と希望に満ちた介護事業は理想とは程遠かった?20年間の経験から介護保険制度の改善を訴えかけ欠陥だらけの制度を検証しています。
批評
ホームヘルパーは猛暑だろうが、大雨、大雪が降っても、決められた時間に訪問しないといけません。往復する時間も大変。ヘルパーの過酷な労働環境に一石と投じています。制度に対する不満が出ているのは事業者や現場の声。著者はどっかの大学の先生と違い、現場で20年以上働いていた人物。上辺だけの言葉とは決定的に違います。
著者の「訪問介護事業は近い将来消滅する」と言う考えは荒唐無稽とはいえない迫力を感じました。団塊世代の多くが75歳を迎える2025年問題をどう乗り越えるのか?ただ悲観をするのではなく、どうしたら良いのか?検証してくスタイルは理路整然としており納得できるところも多かったです。「家族介護」「ヘルパー役」制度など独自の見解は現場を知っている方だから言える意見だと感想を持ちました。「相続は介護した家族を優先すべき」という主張も理解ができました。一つ注意したいのは、著者は三鷹市のルールで話してしています。介護保険事業は地域によって違いが結構あることを理解しておいてください。
施設入居者に対する介護と違い、訪問介護の大変さは目を見張るものがあります。 本作を読めばホームヘルパーの離職率の高さも納得できます。著者の主張は理想論っぽいところもありますが、現場で理解しているだけあって説得力があります。ホームヘルパーに関するというよりは、訪問介護事業に関することがメインで書かれており、こちらの方に関心が高い方におすすめできる一冊です。
4)現場で使える【訪問介護】サービス提供責任者-便利帖 第3版
著:田中元(翔泳社・2021年)
要約
突然「サービス提供責任者(サ責)に」任命されたら?責任ある役職だからこそ、理解しておかなければいけない内容や心構えがたくさんあります。本書ではサービス提供責任者の仕事を基本から解説されています。2021年4月より施行された新基準に対応。業務で使える「実践シート」もWebから無料ダウンロードできます。
批評
サービス提供責任者(サ責)とは、訪問介護現場のリーダー役を担い、利用者とヘルパー、ケアマネジャーの潤滑油となる大切なポジション。介護士のキャリアアップに繋がる一つの選択肢として注目されています。「具体的に何をするのか?」「給料面は?」など素朴な疑問も増えると思います。本書では「訪問介護計画」「ヘルパーの手配」などの業務から「待遇面」について詳しく学ぶことができます。
タイトル通り、介護で働いている方向けの本でした。現場のヘルパーでキャリアアップをしたいと考えている方はサービス提供責任者を目指すと思います。どのような業務なのかを分かりやすく解説されているので、流れが良くわかります。「責任に見合う給料は貰えるの?」など気になるけどなかなか分からないこともしっかり書かれています。コラムがあるのですが、その項目で気になるポイントをしっかり教えてくれていました。
管理職でも現場に出てヘルパーもしなければいけません。訪問介護計画を立てたり、現場で働いたりと大変な仕事ですがやりがいも強く感じる仕事です。この本は実践的な内容についても詳しく説明されているので、プロ意識を学ばせてくれます。介護業界は人不足です。高齢化社会に進んでいるため、需要は増え続けるでしょう。サービス提供責任者になれば待遇面で期待ができます。知っておいて損はしない内容を学べる良書で介護関連の方は必読です。
【番外編】訪問看護のおすすめ本
◆現場で使える訪問看護便利帖
著:介護と医療研究会/翻:山岡栄里/監:河村雅明(翔泳社・2016年)
要約
現在の日本は高齢化社会を迎え、在宅看護の重要性が問われています。訪問看護とはどのような仕事なのでしょうか?本書の特徴ですが、訪問看護初心者はもちろんのこと、患者さんや家族の方まで有益な情報が満載の内容となっています。特典としてアセスメントシートのダウンロードもできます。
批評
訪問看護は利用者の死に向き合わなくてはいけません。メンタル面で苦痛を伴うことも多いですが、得られる喜びも多いです。本書では「訪問看護の基本」から「看取りの際に関すること」まで訪問看護のことがすべて網羅されています。難しい内容もカラーや図が多く読みやすいように工夫されています。要点が分かりやすくまとめられているので誰でも最後まで読み進めることができる一冊。
この本を読む前は訪問看護についてなんとなくイメージがつく程度で、具体的にどのようなことをしているのかは分かりませんでした。在宅医療で最優先されるのは「患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)」です。「病気で人生の最期をどこで迎えたいですか?」こう聞かれたとき、自宅と考える方が増えています。もし自分だったら?こう考えてみたとき看護側の視点を知れたことは有益でした。訪問看護初心者がターゲットですが、訪問看護師を受ける立場の方は家族が読んでも役立つ情報が満載と感じました。
病院の看護師は急性期の患者に対する対応がメインでメンタルケアをすることが難しいです。訪問看護は在宅療養の患者と寄り添うことが大事になります。訪問介護と似ているところ多いです。看護師側の視点と患者側や家族の視点では見ている景色が違うときがあります。本書はどちら側の立場の方々でも参考に一冊。在宅医療に興味がある方にはおすすめしたい本です。
玄武書房の訪問介護に関する書籍
訪問介護あるある-法律トラブル13事例
村尾和俊
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介護職にエール!-つらい・きつい・やめたい気持ちをリセット-
菊池すもも
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まとめ
訪問介護は他人の排泄の世話をする時点で大変な仕事と認識できます。自分が家族の排泄の世話を簡単にできるかと聞かれれば答えに困ってしまうでしょう。ホームヘルパーたちはプロ意識を持って仕事をしています。ネガティブなイメージを持たれやすい職業ですが、実際に働いている方たちの声を聞くと、やりがいがありプライドを持って仕事をしていることが理解できます。
感謝の気持ちを再認識するためにも、今回紹介した本をどれか手に取って読んでみてはいかがでしょうか?
未知の世界のできごとに感じるかもしれませんが、実際に働いている方の声や法制度を知ることで訪問介護が身近になると思います。