できることなら費用をおさえつつ、安心できる出版社に依頼したいですよね。この記事では、自費出版を格安でおこなう方法や失敗しないために事前にチェックすべきポイントをご紹介します。
1.自費出版と商業出版の違いとは
自費出版とは
自費出版は、出版にかかる費用を著者自身が負担して自分のコンテンツや原稿を出版する方法です。著者自身が出版社に依頼をおこない費用を支払うため、著者が雇用者・出版社は被雇用者という関係性が生まれます。出版社は被雇用者になるわけですから、著者が出版社に制作にかかる費用の支払いをしても、出版社から著者へ支払うことはありません。
つまり、本が売れても印税などの支払いは発生しないということになります。その代わり、誰からの指図も受けることなく自由に自分のオリジナルコンテンツを作成でき、書籍が売れれば売上金から手数料を引いた金額が著者自身のものとなります。
自費出版で書籍を作成する人は、同人誌で漫画や小説、絵本などを作成した経験のある人、自身が体験した珍しい経験を世に出して人との繋がりを持ちたい人、現役を引退して自身の経験を自伝として残したい人などがいます。
商業出版とは
商業出版は、出版にかかる費用を出版社が負担して、売れるコンテンツや話題になりそうなコンテンツを出版する方法です。校正や印刷に関する費用だけでなく、原稿を制作するための取材費や出張費なども出版社が負担をするケースもあります。
関係性としては、出版社が雇用者で著者が被雇用者になるため、著者に対して原稿使用料として印税の支払いが発生します。ただし、商業出版は売れることを前提とした出版方法であるために、出版社による厳しい審査が設定されています。
その審査に通過するのは1,000に1〜2作品と言われるほどの狭き門であるため、自費出版が一般化される以前は無名の個人が出版社を通してコンテンツを世に広めるのは至難の業でした。しかし、自費出版が普及してきたことで、無名の個人でも自力で自分の書籍を出版することができるようになりました。
出版の目的が違う
自費出版と商業出版の違いですが、目的に大きな違いがあります。自費出版の目的は著者のブランド力を上げ、著者の考えや経験を世に広めることがメインとなっていますが、商業出版は商業的な目的が前提となっています。もちろん商業出版にも著者のブランド力向上や著者の考えを広める効果は期待されています。ですが、出版社が主体となって動いている以上、事業を運営していくために出版を確実に利益に繋げる必要があるのです。
印税が違う
自費出版と商業出版では、著者が受け取る報酬にも違いがあります。自費出版の場合は書籍の売上金から販売手数料などを差し引いた金額が著者の報酬となり、商業出版の場合は書籍が売上に応じて発生する印税が報酬となります。売上に対する報酬の割合としては、自費出版の場合は売上金の50%前後、商業出版の場合は売上金の7〜10%が印税として支払われます。
2.自費出版の流通販路
自費出版をする上では、書籍にどのような流通販路があるかを知っておく必要があります。代表的な5つの販路をご紹介します。その時代によっての変化(需要や経路)もありますが、時代を問わず変わらない一面もあります。
書店での販売
1つ目は、王道である書店での販売です。全国の書店に配本されるようになれば、多くの人に手にとってもらう機会も増えていくことでしょう。作成した本を書店に並べるためには、出版社と書店を繋ぐ取次会社に自分の本を選んでもらう必要があります。書店にどれくらいの数の本を並べるかは取次会社が決めるため、書店での販売を成功させるには取次会社への営業が欠かせません。
ネットでの販売
2つ目の方法としては、大手ネットショップなどを利用したネット販売があります。インターネットやスマホの普及でネットでの買い物が当たり前になった現代において、ネットでの販売も有力な流通販路となっています。SNSや自身のウェブサイトを通したネットマーケティングを取り入れると、より効果的な販売が可能になります。
直接販売
3つ目は、著者自身による直接販売です。著者自身が開催するセミナーやイベント、自身の公式サイトやブログなどで、著者が顧客に直接販売する方法です。書店での販売のように自分を知らない人へのアプローチとはなりませんが、自分を良く知ってくれているファンの購入になりますので、まとまった冊数を販売することができるでしょう。
国会図書館へ納本や献本
販売ではありませんが、国立国会図書館への納本や献本という形の流通経路があります。日本で発行される全ての書籍は国立国会図書館へ納入する義務がありますから、自費出版で発行した書籍も例外ではありません。自身が作成した原稿が書籍として形になった証とも言えます。
一般図書館へ蔵書
一般図書館への蔵書も自身の書籍を広める方法の一つです。一般図書館は全国に点在していますから、図書館への蔵書が決まれば全国の図書館に自分の書籍が置かれることになります。もちろん無条件で全国の図書館に置ける訳ではありませんが、書籍を広めるための一つの方法として知っておいても損はないはずです。
3.自費出版の方法
個人出版
自費出版1つ目の選択肢は、個人出版です。個人出版とは、書店での流通を目的とせず、身内や知人のみに配布するための出版方法です。同人誌やファン向けの作品集、自分史の作成などで採用される出版方法でもあります。書店での流通を目的としていないため、書籍の唯一性を示す役割を果たす国際標準図書番号、いわゆるISBNコードが書籍に付与されません。ただし、自分の裁量だけで作品を仕上げることができ、レイアウトや表紙のデザインも自分の望み通りのものを作ることができます。
カスタム出版
自費出版2つ目の選択肢は、カスタム出版です。出版社各社で呼び名が異なっており、共同出版や協力出版といった名称の場合もあります。出版の方法としては、原稿の作成や出版にかかる費用は著者側で準備をおこない、校正や製本・宣伝などを出版社が担います。個人出版とは異なり、ISBNコードが付与されるため、書店への流通・販売が可能になります。
オンデマンド出版
自費出版3つ目の選択肢は、オンデマンド出版です。オンデマンド出版とは、書籍データを保存しておくことで1冊から製本することができるので、受注してから印刷し、必要な分だけ製本すれば良くなるため、在庫リスクを抱えることなく費用負担を抑えた出版を可能にします。また、ISBNコードも付与されるため、唯一性のあるオリジナル書籍を世に出すことができます。個人出版と同様に、原稿作成から表紙デザインまでを著者自身がおこなうことが通常です。
4.自費出版までの流れ
問い合わせ・相談
まずは出版社への問い合わせや相談から始めます。HPなどで事前に出版社の情報をリサーチし、自分の理想とする出版のサポートをしてくれそうな出版社へ問い合わせをおこないます。出版社の選び方について後述していますので、そちらも参考にしてみてください。
見積り・契約
相談の上信頼できそうであれば、契約についての見積りを依頼しましょう。初めての出版であれば思いがけない追加出費が発生する可能性がありますから、その場合の対応方法など見積り料金の内訳を確認します。内容に問題なければ、出版社との契約を締結します。
原稿作成
契約が完了すれば原稿作成に移ります。自分のコンテンツが後世にも残るものになりますから、細部にこだわり記念になる作品を作りあげましょう。
編集・校正・確認
原稿が完成したら、繰り返し編集・校正・確認をおこないクオリティを高めていきます。校正とは、印刷物の誤字脱字やページレイアウト、デザインの色味などの修正をおこなうことです。自分では気づけない違和感まで第三者の目でしっかりとチェックをおこない、読み手のストレスを排除します。クレームのもとを断つための大事な作業でもあります。
デザイン作成
表紙のデザインの検討をおこないます。デザインは本の第一印象を決める大事な項目です。書店に並ぶ数ある書籍の中から自分の本を選んでもらうために、他の本との比較もおこないながら、納得のいくデザインを目指しましょう。
印刷・製本・出版
デザインが決まればあとは印刷・製本をするのみになります。ただし、データで見るデザインと印刷した後のデザインには違いが出ますから、最後まで確認作業は怠らないようにします。ここまでの作業を経ることで、自身のオリジナル作品の出版が実現のものとなります。
印税受け取り
書籍が出版され世に出てからは、売上に応じた印税が著者に対して支払われます。
5.自費出版の費用を格安にするには
自費出版は出版にかかる費用が自己負担になりますから、できるだけ安くおさえて出版できれば負担が軽減します。人の手がかかるところは費用が上乗せされてしまいますから、必要な所以外はできるだけ自分の手で作業すると安くおさえることができます。プロに丸投げで任せするよりも、自分で作り上げた感覚(出版を達成できた自信)も大切です。
編集費用
まずは原稿作成や編集をするための費用をおさえます。原稿作成には編集者、表紙デザインにはデザイナー、文章の校正には校正を専門にするスタッフに依頼することができますが、依頼をするごとに人件費が幾重にも積み重なっていきます。全ての工程を依頼していては費用が増えるだけになりますので、これらの作業を自分でやるか知人などの近しい人に依頼することで、大きな費用削減に繋がるはずです。一字一句全てにおいて誤字脱字をチェック済み、文章の言い回しや表現方法についても確認済みの、完全データ原稿を自身で作成することが理想的です。
印刷・製本
続いては、印刷・製本工程での費用削減方法です。検討をすべき項目としては、カバーの種類・カラー・紙質の3つがメインとなります。カバーについてはソフトカバーに、カラーについてはモノクロに、紙質については上質紙にすることで、ある程度のクオリティを保ちつつ費用をおさえることができます。他にも書籍のサイズを小さくする、ページ数をおさえることでも費用削減が可能です。
流通
書籍の販売といえば書店での陳列が王道ではありますが、書店での流通を避けることで、大きく費用をおさえることができます。著名な方の書籍であれば書店に並べる効果は大いに期待できますが、そうでなければ高い配本費用を回収できるほどの販売を見込むことはできません。ネットやSNS、直接販売など流通経路は他にいくらでも存在します。100部単位の部数であれば、大手ECサイトなどでの販売を選択することで費用をおさえることができます。
6.玄武書房の自費出版サービスは何があるの?
自叙伝出版
1つは、自叙伝出版のサービスです。著者の生み出したコンテンツをそのまま世に伝えることをコンセプトにしており、どうしても出版の夢を叶えたいという方のためのサービスです。オンデマンドで受注生産の販売方法を採用しているため、在庫を抱えるリスクがなく、売れた分だけ製本していく仕組みです。著者側で原稿を書き上げている場合には最短1ヶ月程度で出版を実現できますが、原稿がない状況だとしてもイチから出版までのサポートを受けることができます。
ブランディング出版
もう1つは、ブランディング出版のサービスです。ビジネスや集客に書籍を役立てることを目的としており、3ヶ月での回収を目指すことをコンセプトにしたサービスでもあります。自費出版というと収益性がなく記念出版と思われる側面がありますが、ブランディング出版ではより商業的な目線でのサポートをおこないます。著者の知識や技術を多くの人に正しく知ってもらう手助けをおこないます。
7.自費出版で失敗しない為には?
自費出版で失敗しないための5つのポイントをご紹介します。まずは自分が「なぜ出版したいと思ったのか」という明確なゴールを持つことが大切かもしれません。出版の目的さえ見失わなければ、自費出版の業者や出版社選びも自然と絞られてくるでしょう。正しい取捨選択こそが満足感のある自費出版(商業出版)へつながります。出版における失敗とは、「著者が満足できない出版」となってしまうため、事前に必要な確認などは慎重に行っておくことをお勧めします。
イメージを持っておく
出版を依頼する前に、どのような書籍を出版したいか具体的にイメージできるよう調査を進めておくことが大切です。とにかく費用をおさえて安く書籍を仕上げたい、書店などへの流通は希望せず自分の作り上げたコンテンツを知人など身近な人に配りたい、ある程度の規模感を持って書店での陳列を目指した出版に取り組みたい、流通についてはネットを中心にした販売をおこないたいなど、調べを進めることで自分の希望する出版のカタチが見えてくるはずです。
丁寧に説明してくれる出版社を選ぶ
特に料金について丁寧に説明してくれる出版社を選びましょう。出版を依頼する際は、編集から製本までのプロセスをパッケージ化したプラン料金、追加の作業が発生したときのオプション料金それぞれを確認することができれば、透明性の高い出版社とパートナーになることができます。料金の明細が記載された見積書を発行してもらい、事前に確認するようにしましょう。
ISBNコードを付与できる出版社を選ぶ
書籍を流通させるには、国際標準図書番号と呼ばれるISBNコードが必要になります。ISBNコードなしに書店に並べる、通販サイトで販売することはできませんから、ISBNコードを付与できる出版社を選ぶようにします。
出版した本を流通させる仕組みのある出版社を選ぶ
作成した書籍をより多くの人に見てもらうためには、出版物を広く流通させる必要があります。大手ネット通販での販売実績がある、全国の書店への販売網を持っているなど、流通させる仕組みやノウハウを出版社が所有していることを相談時に確認しましょう。
原稿の校正もしてくれる出版社を選ぶ
著者が作成した原稿をそのままにせず、校正もしてくれる出版社を選ぶようにします。出版社のプランや著者の意向で校正をしないケースもありますが、自社の評判にも関わることですから、しっかりとした校正を実施している出版社を選びましょう。出版社から販売されている書籍を購入してみるのも一つの方法です。