邪馬台国の謎に迫るおすすめ本:書籍6選|本当に卑弥呼は存在したのか?

「邪馬台国はどこにあったのか?」「卑弥呼は存在したのか?」

邪馬台国は日本史最大のミステリーで、これほど魅力的な題材はありません。論争が江戸時代から200年以上も続いています。

多くの研究者や考古学ファンたちが心血注いで調べましたが、残念ながら明確な答えが出ていません。邪馬台国が存在した場所が断定されるまで、多くの人たちを虜にすることは間違いないでしょう。

この記事では「邪馬台国」の厳選したおすすめ6冊を紹介します。
【どの説が正しいという判断は、皆さんが読み解いて、歴史の謎を楽しんでください】

邪馬台国に関する本はロマンがいっぱい

邪馬台国や卑弥呼に関する史料は三国志で有名な「魏志倭人伝」のみです。この1800年近くも前に書かれた2000文字程度の文献に日本人は翻弄され続けています。

日本だけではなく中国まで巻き込んだロマンある展開になっています。邪馬台国がどうなったかは謎に包まれており、考察をする人たちが後を絶ちません。日本のルーツを探る必要不可欠な研究なのです。

研究者、考古学ファン、オカルトファンたちが真実を探そうと躍起になっています。

長年の研究が行われてきているので、これらに関する書籍は山のように存在しています。作者が心血を注ぎ調べ上げて書かれた本は、小説にはないリアリティがあります。

みなさんも心躍るロマン満載の世界に没頭してみませんか?

邪馬台国に関するおすすめ本6選

邪馬台国が存在したのか?その場所は?読み物として、とても魅力のあるジャンルで人気があります。専門的なものからエンタメ要素が強いものまでさまざまなものが出版されています。

ここでは決定版とも言える、おすすめの本6選を紹介します。

1)邪馬台国は存在しなかった

田中英道:著(勉誠出版・2018年)

要約

「卑弥呼」や「邪馬台国」が登場するのは「魏志倭人伝」だけ。なぜ卑弥呼神社が存在しないのか?魏志倭人伝とはなんなのか?数多くの疑問を説明するのは無理がありました。邪馬台国が存在しないと結論付けることで解決した一冊。

批評

衝撃的なタイトルで興味がそそられる人も多いのではないでしょうか。秀逸なタイトルだと手に取りたくなります。著者は邪馬台国が存在しなかった3つの理由を述べています。「魏志倭人伝の信憑性がない」「卑弥呼神社が無い」「日本の文献に登場しない」。魏志倭人伝がほぼ全て伝聞に基づく記述で、真実ではないから存在しないと主張しています。また当時の天皇関連まで話を膨らませた意欲作でもあります。

著者の主張である、魏志倭人伝は三国志の一部で歴史的資料ではないという考えは説得力がありました。「卑弥呼や邪馬台国が存在しないかも?」という気持ちになった人もいるでしょう。邪馬台国の存在に懐疑的な方は、本書を読むと納得できるかもしれません。明確な資料は提示されていませんが、内容に納得できる点もあり、邪馬台国が存在しなかったという説は興味深いものでした。北九州説と畿内説で争うのは無意味なのかもしれません。日本史の専門家じゃない著者だからこそ柔軟な思考で書かれていると感じました。

魏志倭人伝は中国の歴史書「三国志」の一部分で、わずか2,000文字程度の書物。魏志倭人伝の作者である陳寿が伝聞で書いたのであって、自分の目で見た内容ではありません。そのため真実として疑問視している研究者もたくさんいます。本書の楽しみ方は、この魏志倭人伝を信じるか信じないかで変わってくると思います。邪馬台国が存在しなかったとすればどれだけセンセーショナルなニュースになるのでしょうか?想像するとワクワクします。

2)魏志倭人伝の謎を解く-三国志から見る邪馬台国

渡邉義浩:著(中央公論新社・2012年)

要約

「なぜ邪馬台国は中国の東南海上に描かれたのか?」邪馬台国の謎を解き明かすには「魏志倭人伝」の解読が必須。三国志研究の第一人者が当時の情勢や世界観を元に虚実を判断し解き明かします。巻末に「魏志倭人伝」の全文と詳細な訳注を収録。

批評

三国志研究の第一人者である渡邉義浩氏が中国側の視点から邪馬台国を推察しています。著者は魏志倭人伝について、中国の時代背景や国際情勢、陳寿の思想を基準にかかれていると主張しています。先ほど紹介した書籍の「邪馬台国は存在しなかった」と同じく「魏志倭人伝」がキーポイントとなる本書ですが、こちらはより専門的で文献分析が中心で話が進みます。日本古代史や日本考古学の専門でない著者が三国時代の専門家の立場で検証しているのは価値が高いのではないでしょうか。

「魏志倭人伝」の全文と詳細な訳注が収録されており、記述の不自然な点を探っていく推理式スタイルが面白かったです。中国の思想の記述に説得力があるので当時の時代背景を知ることができました。邪馬台国自体が三国志の作者陳寿の妄想だったのかも?という考えは理解ができました。ただ、本書は三国志に関してある程度の基礎知識がないと、少し理解するのが難しいと感じました。

とんでもない理論の娯楽本というより、専門書的な内容。邪馬台国に強い興味がないと読み進めるのが辛いかもしれませんが、魏志倭人伝の成り立ちから邪馬台国へのアプローチの仕方は説得力があり読んでいて吸い込まれていきます。自分の国の歴史を中国の歴史書を用いて探ること自体が無意味なのかもと考えさせられる一冊です。

3)邪馬台国は「朱の王国」だった

蒲池明弘:著(文藝春秋・2018年)

要約

「邪馬台国はどこにあったのか?」邪馬台国とヤマト王権は朱によって繁栄した可能性があります。日の丸の色は朱色。日本のイメージカラーといって過言ではありません。日本で切っては切れぬ関係の朱を軸に邪馬台国を考察していきます。

批評

「邪馬台国の場所は?」がメインテーマではなく「朱」によって豊かな生活を送っていた当時を考察しています。朱は加熱して硫黄を分離すれば、水銀になります。古代の中国では、この水銀が不老不死の薬に必要と考えられて重宝されていました。著者は邪馬台国とヤマト王権の古代国家は朱によって繁栄した可能性が高いと主張しています。邪馬台国とタイトルが付けられていますが、どちらかというと日本古代史論の側面が強いです。

朱を中心とした展開が真新しいと感じました。古墳をなんであんなに作ることができたのでしょうか?その財源は?なぜ神武天皇は畿内に向かったのでしょうか?最初のうちは懐疑的な気持ちで読んでいましたが、これらの疑問に対して、気が付けば著者の考えに納得していく自分がいました。読み終えたときには一つの知識として勉強になりましたが、邪馬台国の所在地の明確な提示がなかったのは少し残念でした。

推測だらけの本書ですが、説明や論証が丁寧でエンタメとして楽しめる読み物です。邪馬台国関連はさまざまな本が出版されていますが、「朱」と関連付けしている本書は既存にはない新しい発想で非常にためになりました。ただの空想物ではない魅力がある一冊でした。オーソドックスな邪馬台国物に触手が沸かない人におすすめできます。

4)データサイエンスが解く邪馬台国-北部九州説はゆるがない

安本美典:著(朝日新聞出版・2021年)

要約

化学で解き明かす。邪馬台国はどこに存在したのか?本書では統計学的分析を用いた結果、99.9%で北九説と説いています。邪馬台国論争をデータサイエンスからアプローチ。科学で解明しようと新たに試みた力作です。

批評

邪馬台国の謎を解き明かそうと専門家は躍起になっていますが、大半は空想で調べています。本書はデータサイエンスとしてベイズの統計学を用いて邪馬台国の所在地を考察しています。ベイズの統計学は新しいデータを取り込みながら推定や予測の精度を高めていくというもの。邪馬台国を科学の力で検証していくスタイルは斬新かつ、強力な説得力を生んでいます。

今のところ、邪馬台国は「北九州」説と「畿内」説が有力。著者は邪馬台国が福岡県にあった確率を99.8%と断定しています。データサイエンスを駆使して畿内説を完全否定する姿勢は説得力がありました。一つ気になったのは魏志倭人伝のデータを信じていることです。魏志倭人伝に懐疑的な方はこの説が否定されてしまうでしょう。 魏志倭人伝についても科学的なアプローチができたら、より一層真実に近づいたかもしれません。

データサイエンスは理系で文系の領域ではありません。日本の考古学は文系が主流。ですが、世界では考古学は理系の分野になっています。今後日本も考古学の領域が理系になっていく気がします。近い将来、邪馬台国論に一石を投じる力作かもしれません。邪馬台国を理系からの視点で考えてみたい方におすすめの一冊です。

5)決定版 邪馬台国の全解決

孫栄健:著(言視舎・2018年)

要約

「邪馬台国の全解決」「魏志東夷伝の一構想」の著者による邪馬台国決定版。孔子が書いた「春秋」に沿った記述を読み取って解釈していきます。この手法を用いて魏志倭人伝を調べていくと今までにはない新しい事実が露わになっていきます。

批評

今までの解読法とは違い、春秋を用いていることです。春秋の筆法は「文を規則的に矛盾させながら、その奥に真意を語る」ことと著者は述べています。他に「露布」といわれる「数字を10倍」にする社会慣例があります。また中国史書は「前史を継ぐ」原則も存在します。これらの筆法ルールを当てはまることで真実が浮かび上がってきます。その結果、今までの「三国志・魏志倭人伝」の解釈に問題があると指摘しています。邪馬台国論争を根本から否定する内容ともいえます。

読んで率直に感じたことは中国史書の知識がないと書けないことばかりと感じました。春秋の筆法では書き間違いや読み間違いとされてきたことが、推理することで真実に変わっていきます。まるで極上の推理小説を読んでいるといって過言ではありませんでした。果てしない邪馬台国論争に終止符を打ったというレビューも多くあり、邪馬台国の決定版と認識されています。

中国史書の読解方法にフォーカスを置いた本書は画期的でしょう。「政治的文書」を理解した上で解釈しなければならないという主張もあり、多角的に論じられている一冊。卑弥呼の死についてもページを割いており、この1冊を読むだけで邪馬台国の論客になれるほどの内容でした。専門的な説明が多く、少し難しい内容もありますが、時間をかけてじっくり読み進めていきたい一冊でおすすめです。

5)考古学から見た邪馬台国大和説-畿内ではありえぬ邪馬台国

関川尚功:著(梓書院・2020年)

要約

邪馬台国は2つ存在した?畿内ヤマト国(邪馬台国)と北九州ヤマト国(女王国)があった根拠とは?奇想天外な一冊?それとも新しい新説として日本古代史の謎を解明でききるのでしょうか。

批評

邪馬台国論争で激論されるところが、「邪馬台国はどこに存在していたか?」ではないでしょうか?北九州か畿内が有力視されています。本書は両方に卑弥呼(女王)がいたとしています。魏書、古事記、日本書紀を丹念に読み解いて史料批判をして、真実を探しています。

著者は魏志倭人伝を書いた陳寿の解釈違いがあったと解説しています。邪馬台国に関する資料は伝聞が主体で正確ではなかったのでしょう。里数距離で導き出された女王国と日数記事導き出された邪馬台国は同一として考えること自体、無理があるようです。確かに著者の主張に違和感がなかったです。後半には、2国の関係が緻密に描かれています。畿内の邪馬台国が北九州の女王国を支配していくという突拍子もない展開になるのですが、納得できる面も多くありました。

本作は奇をてらった作品と思われるかもしれませんが、多くの参考文献を元に丁寧な論考で説得力がありました。畿内説と九州説が融合する展開に驚くかもしれませんが、破綻せず最後までかかれています。邪馬台国系の本は専門的になりがちで理解しづらいことも多々あるのですが、できるだけわかりやすく読者に伝えたい著者の気持ちが感じる一冊でした。

玄武書房の邪馬台国や卑弥呼に関する書籍

「魏志倭人伝」の正しい解釈で邪馬台国論争遂に決着
兒玉眞

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「魏志倭人伝」の正しい解釈で邪馬台国論争遂に決着

卑弥呼と邪馬台国の真実 ~武内宿禰と出雲の伝承から~
土方水月

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邪馬台国と卑弥呼の真実

まとめ

邪馬台国はどれも仮説の話です。決定的な証拠がありません。長年の謎であり、さまざまな人たちが新説を唱えています。

今のところ、「北九州」と「畿内」の2つが有力視されていますが、他の地域を主張している研究者もいます。どれも仮説の段階で証明されていなのが実情。ただ邪馬台国をテーマにした本は作者の熱量が凄まじい。

一つの謎を解明しても、そこからまた新たに謎が誕生します。こんなに面白い題材はそうそうないでしょう。

いろいろな考え方の本を読むことでバラバラな内容を深く知ることができます。考え方に偏りも出てしまうので、いろいろ読破してみるのがよいかもしれません。

今回紹介した本はどれも理路騒然として読んで満足いくものです。ぜひおすすめの6冊を手に取ってみてください。