自費出版の成功例について
まず自費出版によって「成功した」と言えるのは、どのような状態なのかを考えてみましょう。
・夢の印税生活に突入する
・単純に部数が売れて重版される
・知名度アップでオファーが増える
このように、必ずしも「部数が売れる=成功」ではないということを認識してください。なぜなら、自費出版で印税生活というのは現実的ではないため、それ以外のメリット(成功例)を知っておく必要があります。
それらにメリットを感じることができる方のみが自費出版に挑戦できる人だと思います。もし印税生活を夢見て自費出版しようと考える人は間違いなく失敗するでしょう。自費出版の基本については、下記にまとめているのでご確認ください。
≫【初心者も安心】自費出版とは?費用や印税についても詳しく解説
出版することのメリットについて
残念ながら、自費出版で「印税生活を勝ち取る」のは99%無理だということをお伝えします。もちろん100%ではありませんが、私が知る限り数人しかいませんので、何十万分の一くらいの“ほぼ不可能”なレベルの夢物語です。そこだけを目指して挑戦する価値があるかは疑問です。
それよりも出版のメリットは他にも多数あります。それらの恩恵を得られる方が著者にとっては大きいと思います。自費出版してよかったと感じる方の多くは以下のような恩恵を得ることができた場合が多いです。
商業流通すれば信頼度がアップ
自費出版の成功例として誰もが実感できるのが知名度や信頼度の向上だと思います。一般ユーザーからすれば(実際に本を買っていなくても)本を出版した人『著者』という肩書きは容易に信頼を得られることが多いです。
本1冊を書きあげる知識と労力は誰もが認める(想像できる)素晴らしい能力です。それは著者の実力が認められたと同じことです。実際に、著者が思っていた以上に「本を出した人=すごい人」というイメージを持たれ、そのような状態に恐縮してしまう著者も多いです。
さらに読者(実際に本を購入して読んだ人)にとって、著者の信頼度は高くなります。例えば、何かしらのビジネスが広がったり、いろいろな人を紹介されたり、多くのつながりを感じることができます。もちろん、出版のプロと一緒に作ったクオリティの高い作品である必要があります。
ブランディング効果が抜群
本を出版することは『肩書き』を手にする絶好のチャンスとなります。その書籍の内容に関する専門家として認識されるので、ブランディング効果としては最適だと思います。本を読んでいない人からも同様に認識されます。
一般的にブランディングにはストーリー(その人の生き方)が重要です。本には他の媒体やブログ・SNSでは難しいとされる大きな強みがあります。それは著者の伝えたい想いを正しい順番で伝えることができる点です。
正しい想いを伝えるためには、正しい順番である必要があり、飛ばさずに目を通してもらう必要もあります。書籍の強みは1ページ目から順番に読んでいくのが基本なので、本来の正しい伝え方が可能なツールになります。
テレビや雑誌への出演が決まる
自費出版であっても商業流通させてしまえば、読者からすれば他の商業出版の書籍と同じ扱いとなります。その読者とは「出版社・著者・書店」以外のすべての人ですから、雑誌やテレビを作っているメディア関係者たちも読者に含まれます。
実際に出版された本を読んだ雑誌記者やテレビ番組の制作者が興味を持って取材依頼をしてくるというパターンは多いです。自伝のようなものよりはビジネス書や実用書の方がオファーが多くなります。メディアは常に新しいキャラクターを探しています。自伝のような「人生」をまとめたものでも、各媒体の色によっては興味を持たれることもあります。
また各媒体へ著者からアピールしても問題ありません。献本(各媒体などに本を送る)することで取り上げてもらえることも多いです。その取材で結果が出せれば、さらに先のオファーへとつながっていきます。
読者とのつながりができる
コンサルタントやカウンセラーとして活躍している著者にとっては「読者=顧客」の場合が多いと思います。本の読者は「著者のファン」になることがあるので、その関係性が築ければ全てがスムーズに進んでいきます。
また読者との個人的なつながりからグループや団体につながることも多いです。つまり、一人の読者が顧客を呼んでくるという状態になったり、逆に顧客が読者になったりという流れも考えられます。
例え、そこにビジネス的な要素がなくても、その本が心に響く内容であれば、読者からコンタクトは多いと思います。「共感しました」や「勇気をもらいました」というような声は読者も本人(著者)に伝えたいものです。
出版を通じて伝える技術が向上する
自費出版と言えども、まともな本(商業流通させる本)を作るためには『出版のプロ』の力が必要です。作品のクオリティを高めなければ「出版する意味がない」と言っても過言ではありません。
原稿の編集作業では、読者を意識した修正が行われます。その修正方針や内容にふれることができる著者は、第三者目線で「伝える手段」を勉強できるわけです。それが今後の伝える力になることは間違いありません。
基本的には、自費出版であってもタイトルの変更や目次の調整などもあります。自費出版の成功例(パターン)となるためには、自らの伝える力の向上も必要だと思います。このように出版までの道のりには学びも多いと気づくはずです。
自費出版の成功例をピックアップ
具体的な書籍タイトルも書いていますが、実際にあった成功例のみを紹介しています。今後、自費出版を検討する際に自分が求めるメリットがあるかどうかの判断材料になると思います。
ここで紹介した書籍を購入する必要はありません。なぜなら、これくらいなら自分にも書けるという甘い勘違いをして欲しくないからです。それぞれの書籍には運の要素を含む様々なキッカケがあるので、それを真似することはできません。
単純に部数が売れて印税がすごかった話
『B型自分の説明書』は、いわゆる人間の取説やマニュアル的な作品です。その時代的にも診断系書籍のムーブメントがあったと思います。単行本は1000円前後でシリーズ化されました。結果として、シリーズ累計で600万部を超える大ヒットになった異例の作品です。
仮に印税を10%とすると、600万部×1000円×10%=600,000,000円(6億円)ですが、実際の契約内容によって半額もしくは倍額なども考えられます。夢のある話ですが、これは本当に稀なサクセスストーリーだと思ってください。
もちろん、税金で半分は持っていかれるわけですが、それでも『印税生活』が可能なレベルの成功例と言えるでしょう。逆に言えば、何万部が売れた程度では印税生活には至らないということにも気づかされると思います。
小説がテレビドラマ化された話
『氷の華』は長編の小説ですが、60歳の著者という作品以外の話題性も強く、さらにメディアで取り上げられやすいという流れがありました。実際の発行部数は不明ですが、小説をドラマ化された時点で自費出版においては大成功と言える結果です。
他にも、『リアル鬼ごっこ』はミステリー系の小説で若者を中心に話題になり重版を重ねて累計200万部突破した作品があります。映画やコミックなどのメディア展開もされました。今でもコアなファン層が多く根強い人気があります。
自費出版であっても、このように出版後でも話題になれば出版社側の負担で重版(増刷)されます。印税の取り分に関しては再契約となるかもしれませんが、それでも自費出版から商業出版に昇格したようなイメージです。
雑誌掲載やテレビ出演が決まった話
自費出版の後、有名な週刊誌に著者の人生が取り上げられ、それを見たテレビ番組の制作会社からのオファーが殺到しました。これは一般的な自費出版の“よくある成功パターン”のひとつで「メディア出演のきっかけ」となります。
もちろん、メディアに取り上げられたからと言って売上部数が大幅にアップするとは限りません。それでも結果として『著者のプラス』になっていれば成功になります。出版後のアプローチと戦略を考えておけばチャンスが広がります。
例えば、ビジネスや実用書などで何百万部もの部数が出なくても、テレビ出演をきっかけに依頼や講演が増えたりすることはよく聞く話です。また専門家としての認知度も高まり、さまざまな面で著者の肩書きも活かせる成功例です。
読者からのコンタクト(依頼)が増える話
巻末に自分のメールアドレスを記載したら、読者からの問い合わせが殺到したこともあります。これは販売部数による部分もありますが、問い合わせしてくる読者は確実に『著者のファン』になった方だと思います。
良い本が「顧客を呼んでくる」というのは当たり前の話です。本の読者は感動すれば行動したくなります。その気持ちを誰かに伝えたり、著者に感謝の言葉を伝えたいと考えたり、その行動は著者にとってはプラスになることが多いです。
さらに自費出版の強みとして、基本的には出版社のしばりなく書籍の中に直接的な著者へのコンタクト方法を記載できます。本を読んだ読者がすぐに行動できる手段を提示しておくことは大切です。ただし、出版社の規約によっては、そのようなアプローチができない場合もあります。
読者とのつながりから講演会が増えた話
ある専門書籍において、読者の中に同ジャンルの専門家がいたのですが、その見聞を広めたいと講演会や勉強会を開いてもらった著者もいます。出版後の数年たった今でも、その輪が広がって全国の講演会を飛び回っているようです。
これは何かを一人の力でやるのは大変ですが、自費出版によって仲間が増えるきっかけを作れたというパターンです。面白いことに著者の活躍の場が増えていくと、それだけ書籍も売り上げを伸びていくものです。
ラジオ番組を担当することになった話
自費出版から数年してからラジオ番組を担当することになった著者がいます。その本の内容は生活に根付いたものであることから、その道の専門家としてオファーがあったのだと思います。
他人からすれば、ひとつの成功例としては小さいと感じるかもしれませんが、著者にとっては大きな転機になることがあります。地元の顧客をターゲットにする地域ビジネスやスモールビジネスであれば、間違いなく十分なブランディング効果が生まれます。
自費出版は大変だけど面白い!
自費出版の成功例は、ただ部数が売れるだけではなく、様々な面での恩恵があるということが分かっていただけたと思います。しかし、実際の自費出版には多くのハードルがあることも忘れてはいけません。
<自費出版のハードル>
・高額な費用
・膨大な執筆作業
・出版社選び
もっと細かなことを言えば、在庫管理や処分、契約内容、確認作業、出版後の宣伝などもあります。基本的には自費出版で失敗しないようにする方法は「自分の明確な目的を持つこと」しかありません。
自費出版して得られるメリットを、どのように活かしていきたいのか、その先の目的(目標)がしっかりしていれば大失敗することはないはずです。また短期的な戦略ではなく、中長期的な視点での自費出版にすべきです。
ビジネス書や実用書ならブランディング力が得られ、小説なら作品を一般ユーザーに見てもらうチャンスです。どちらも単なるSNSの発信では得られない効果があります。自費出版の成功も“人それぞれ”ということです。