商業出版とは何か?一見すると、単純のような質問ですが『商業出版』の本当の意味を知れば知るほど、あなたの認識が間違っていることに気づくかもしれません。もし、これから商業出版をしたいと考えているのであれば、この情報は必ず役に立つので覚えておいてください。
<目次>
・商業出版の定義について
・商業出版の種類について
・商業出版ではない出版形式とは?
・あなたに相応しい商業出版とは?
・出版したい!その気持ちを大切に!
商業出版の定義について
商業出版とは何かを考えるときに、よくある勘違いを先にお伝えします。それは、商業出版であれば「著者の費用負担がない」という思い込みです。そもそも商業出版の定義を知らなければ、そのような勘違いをしてしまいます。ここでは、その定義とは何かを理解してもらいたいと思います。
商業出版とは、書店やネットなど商業的な流通経路で、本が売れることで得られる利益が目的の出版となります。その利益とは、出版社からすれば「売上金」であり、著者であれば「印税」になります。そして、特徴的なのは本にISBNという書籍コードが振り分けられることです。
<商業出版とは?>
1.商業流通で販売している
2.著者に印税の支払いがある
3.ISBNが付与されている
商業出版の種類について
・商業出版
一般的に「商業出版とは」と言われたときにイメージするものです。出版社が出版に関する全ての費用負担をしますので、正式な名称をつけるとすれば「無負担商業出版」で良いと思います。編集担当者も売上が実績になるため、本気で著者と向き合い、より良い本を目指して頑張ってくれるでしょう。
ただし、人気ブロガーの書籍化のような既存ファン(だけ)向けのお手軽な本は作業的に行われることが多いです。それは出版さえすれば「買う人」がいるので、その書籍のクオリティは関係ないと考える出版社もあるからです。ブログを“そのまま”本にしたり、最低限の書籍化の作業さえしていない本もあります。
こちらを「無負担商業出版」と呼んだように、以下は著者の負担がある可能性が高いです。けっして、著者負担のある本が劣っているわけではありません。その本の内容や作品つくりの過程によって、本のクオリティは大きく変わっていきます。
・企画出版
以前であれば、こちらも「著者の負担なし」という意味が強かったです。しかし、今は「出版社がサポートします」という意味合いに受け取る程度が良いと思います。正直、曖昧な定義なので、自費出版を誤魔化すために使われる言葉になっています。
このパターンのひとつとしては、本の企画(内容)は編集担当者が考えて、そこに「著者」をあてはめるという形式もあります。例えば、ネット関連の売れ行きが良いからということで、ネットに強い著者に「このような内容で執筆してください」というような流れもあり得ます。
・共同出版
こちらも以前と意味が変わっています。本来の意味は「複数の出版社」が共同して出版することでした。しかし、今では「出版社と著者」が一緒に(共同して)出版するという意味が多くなりました。一般的な言葉としては「共同=平等な負担」というイメージがあると思いますが、基本的には著者が全額負担します。
この言葉を使う出版社側の言い分としては「営業面において、私たちが頑張って宣伝活動をします!」となります。実質的に、自費出版との差がありません。逆に言えば、もし「共同出版」と「自費出版」を分けている出版社における「自費出版」は“営業すらしない”ということになります。
・自費出版
著者が出版費用を負担します。仮に「商業出版を100%保証します!」という宣伝でも大袈裟やウソではありません。なぜなら、誰が出版費用を負担したかは関係なく、商業的な流通で販売されて、印税が発生することで「商業出版」自体は成立しているからです。
なかには「自費出版はちょっと・・・」という人がいますが、無負担商業出版のハードルの高さを知らない無知な人か、現時点では挑戦すらできない人だと思います。その人たちのほとんどが、ずっと出版できず年月の経過と共に出版そのものを諦めてしまいがちです。
商業出版ではない出版形式とは?
商業出版とは“ひとつ”ではなく、何種類もあるということはご理解いただけたと思います。では、商業出版以外の出版形式とは何か?これは明確な言葉も定義もありませんが、あえて言葉にするなら「個人出版」と呼ぶのが良いかもしれません。
個人出版とは、出版業者を経由せず、個人として販売するもので(出版社が支払う)印税という概念はありません。例えば、コミックマーケットでの同人誌販売などは典型的な個人出版と呼べるでしょう。他にも、自分で作った本をメルカリなどで売るのも個人出版にあてはまります。
一概には言えませんが、どうしてもプロ視点が欠如するため、読者の求める本としてのクオリティを維持するのは難しくなります。例えば、コミックマーケットなどで有名なところは法人化しており、出版社における編集担当にかわる存在がいるので、当然ながらクオリティは高まります。
<個人出版の例>
趣味(詩集・句集、マニアックな内容)
同人誌(著作権的にグレーなものを含む)
自分史(自分の子供や孫に残す記録)
家族史(一族の記録や家系図)
社史(会社の歴史の記録や広報用)
あなたに相応しい商業出版とは?
正直、いわゆる商業出版(無負担商業出版)は難しいと考えてください。おそらく企画書の通過率の難しさは何となくイメージできると思いますが、確率的な話で言えば「1000人いたら3人」程度しかないと言われています。
ここで“改めて”考えてもらいたいことがあります。
あなたの「本を出版したい」目的は何でしょうか?
さすがに違うと思いますが、もし「印税生活をしたい」という目的であれば、その手段はかなり限られてしまいます。まず実用書やビジネス書では難しいので、その可能性としては『小説』というジャンルが考えられます。それはエンターテインメント性の高い本は、一般読者に広まりやすい(市場が広い)からです。そして、売れる小説になるためには「有名な文学賞を受賞する」ことが最短コースになります。
少し脱線しましたが、あなたの出版する目的とは何でしょうか?
おそらく、何かしらの経験や知識を広く伝えることだと思います。それによって読者が変化(苦しみを和らげたり、心の支えになったり)すること。もちろん、その先にビジネス的な(金銭)利益という目的があっても問題はありません。
しかし、その目的を達成するためには「3/1000」をクリアする努力が必要です。もしかしたら、努力だけではクリアできない部分(センス)も必要になるかもしれません。あなたは「いつ出版したいですか?」という問いに「将来的に(いつの日か)」であれば、めげずに企画書の持ち込みを続けて行きましょう。
どんなに素晴らしいことを書いたとしても、その前に立ちはだかる壁を超えるのは容易ではありません。素晴らしい内容の本が「必ずしも売れる」とは限りません。著者負担なしの商業出版は「売れる本である」と出版社が認識しないことには成立しません。
今、出版したいという気持ちが強いのであれば、無駄に高いハードルを越えるよりも他の選択肢を考えて行動した方が良いと思います。そのハードルにぶつかり夢破れる人たちが多く、その間の時間と努力は無駄になります。出版できない『本』ほど可哀想なものはありません。
出版したい!その気持ちを大切に!
私が出版という仕事にたずさわっていくなかで出会う「出版したい」と口にする人たちに感じることがあります。それは「この人は、あまり本気じゃないのかな?」ということです。おそらく、本人的には『本気』なのかもしれませんが、実際に出版してきた著者たちと比べると、その熱意が全く違うのです。
例えば、無負担商業出版のハードルは厳しすぎるという現実はお伝えしましたが、その現実を知らない人が多いのです。なぜかと言えば、一度も『応募したことがない』からです。自分はできるという勘違いをしたまま、リアルな行動に移せない人が多いです。
本当は「本を書くこと」は難しいことではありません。あなたが伝えたいことを書いていくだけで、本のような文字の羅列は完成します。しかし、大切なのは“ソノサキ”を考えて書いているかどうかになります。つまり、読者の視点に立って書かれている本かどうかが重要なのです。
別に、読者に媚びる必要はありませんが、読者に『あなたの想い』が伝わらなければ意味がありません。それを伝えるためには、おそらく、今のあなた一人では無理があるでしょう。必ず編集担当者の意見やアドバイスを参考に調整する必要があります。
先にも書きましたように、人気ブロガーの出版のような既存ファンへの販売でない限り、第三者(プロ)の助言がなければ良い本はできあがりません。つまり、そのようなアドバイスや助言をしてくれる出版社を選ぶことも必要です。
実際に、無負担商業出版以外の商業出版(企画出版・共同出版・自費出版)では、何もしない出版社も多いので気を付けてください。著者が持つべき最低限の知識として、本のクオリティは編集担当者によって大きく変化することを覚えておきましょう。