企画出版とは、本来は「著者の負担がなく出版社による書籍の出版」であり、いわゆる「商業出版」と同義語だったはずですが、現在は形を変えています。現在の企画出版とは「出版社が全面サポートする出版」というイメージが強くなりました。
<目次>
・本来の企画出版とは?
・現在の企画出版とは?
・著者の負担はどれくらい?
・出版社のサポート体制
・あなたの出版をする目的とは?
本来の企画出版とは?
ネット辞書とも呼ばれる『ウィキペディア』には「出版社が費用を全額負担して書籍を出版する」という内容で書かれています。たしかに、以前の企画出版は「著者負担のない商業出版」という意味で使われていました。今では全く別物だと考えてください。
なぜ、本来の意味から変わってしまったかと言えば、明確な文献などはありませんが、某出版社が「自費出版」の劣等感を払拭するため(隠すため)に、企画出版という曖昧な表現の言葉を利用したのだと推測できます。出版業界には時代によって、悪徳業者が巣くっていた時期があります。今でも「有名人と対談できます(100万円以上の費用)」というような謎の雑誌を作っている会社も存在します。
現在、企画出版という言葉を使っている出版社は「自費出版」を主体にしている会社が多いと思います。それは「企画出版」が、別の意味になっていることを知っているからです。もし、著者負担のない商業出版をしたいのであれば、企画募集などの要綱をちゃんと確認しておきましょう。
現在の企画出版とは?
一般的には「商業出版」と「自費出版」という言葉は、何となく聞いたことがあるという人が多いと思います。いつかは出版したいと考えている人なら「企画出版」や「共同出版」という言葉くらいまで聞いたことがあるかもしれません。
おそらく、皆さんのイメージとして「商業出版>企画出版>共同出版>自費出版」というような優劣を考えるのではないでしょうか?このような出版の方式に“正しく優劣をつける”なら「著者負担なしの商業出版>それ以外」とするのが適切でしょう。
つまり、現在(2019年)において、企画出版とは「自費出版」と同義語と解釈するのが妥当ということになります。もし、あなたが著名人でない限り「企画出版しませんか?」という誘いは「自費出版しませんか?」と同じ意味だと思ってください。
著者の負担はどれくらい?
基本的には著者が全額負担することがほとんどです。もし出版社側から「出版しませんか?」という声がかかってきたら、必ず「私の費用負担はありますか?」と確認してください。出版という魅力的なワードに舞い上がって聞き忘れないようにしましょう。
悪質な出版業者のごまかしの技術をお伝えしておきます。例えば「営業面での費用負担は我々が行いますのでご安心ください」という風に、いかにも全面バックアップ的なトークをしてきます。しかし、製作費用は著者の負担である以上、その費用のなかに営業費用も含まれているのが実情です。
例えば、そこそこ知名度のある某出版社の場合では「1000冊で200万円」くらいするのですが、そのうち製作費や印刷費、営業費はもちろんのこと、本を書店へ並べてもらうための費用であったり、著者の印税も全て含まれているわけです。その本が売れなくても全く問題ありません。実際には2~3ヵ月もすれば店頭から消えてなくなります。
書店への配本:100~200万円
オンデマンド出版:40万円前後が妥当
当たり前ですが、安ければ良いというわけではありません。例えば、自費出版8万円とかもありますが、家族や親族に配る程度のたったの10冊程度だったり、プロの監修やアドバイスがなく、ただ著者が書いたものを印刷するだけのような“出版もどき”も多いです。
著者が負担する費用に何が含まれているのか、何が含まれていないのか、これは表面的には分かりにくいので、今回お伝えしているような基礎知識を身に着けておくことが重要になります。疑問に感じることがあるなら、すぐに迷わず担当者に質問してください。後でいいかと先延ばしにして、言い出せずに不本意な出版になる可能性もあります。
出版社のサポート体制
企画出版において、あまりサポート体制が強いという出版社は聞いたことがありません。先にも述べましたように、著者が費用を負担した時点で、出版社側の利益は確定していますので、それ以上の行為(営業や宣伝)はあまり意味がないものとなります。
書店へ並べる場合で100万円以上、オンデマンド出版(ネット販売のみ)で40万円以上の著者負担が必要であれば、出版社的には「本の売上」というものは関係ない(期待していない)と思います。実際、当方(玄武書房)では36万円を“事業として採算がとれるギリギリ”のラインとして設定しています。
著者が負担した費用の使われ方として、費用対効果として割高な順番から「書店に本を並べる費用(スペース代)」「本の印刷代」「編集費用」「著者の印税」などがあります。なかでも気になる「書店に本を並べる費用(スペース代)」です。実際には、ほとんどが売れ残って、著者に在庫として戻ってくるか、こっそり廃棄されるかになります。
企画出版のなかには、少し特殊なものもあります。
企画そのものを出版社が考えて、その企画にあった著者を当てはめて出版するという形式も考えられます。それがゴーストライターでなければ、著者としての負担は費用(金銭)ではなく「労働時間」になると思います。この場合は、書籍の出来によって出版社の力の入れようは変わってくるでしょう。ただし、この場合は「企画出版」というワードは使わないことが多いです。私的には、この形式こそが『企画出版』という言葉に相応しいと思っています。
少し脱線しましたが、ついでに・・・
当方でも“著者の経歴”によって「こんな本を書いてみませんか?」という依頼を出すことがあります。この場合は、著者負担のない商業出版になります。もしくは、過去に出版された著者にも執筆依頼をすることがあります。私が面白い(読みたい)と思う本を書いてもらうという、ある意味、自己満足的な『企画出版』かもしれません。もちろん、売れる可能性(需要)があるものしか依頼しません。
あなたの出版をする目的とは?
ここまで企画出版とは何かをお伝えしてきましたが、あなたが「出版をしたい」のであれば、まず考えて欲しいことがあります。ただ形として「本を出版する」だけでは、あなたの本来の目的を果たさないことがありますのでご注意ください。
例えば、(著名人でない)自叙伝・自伝のようなものは著者負担のない商業出版では99%無理だと思ってください。理由は簡単です。それは出版社側(編集担当者)が、その本が「売れる」とは判断しないからです。最近は(私的に)悪質な出版も多くなっていると感じています。誰かの暴露本的な内容や犯罪者の視点で書かれた本なども増えています。話題性があれば何でも良いのか?かなり疑問に感じています。
あなたが出版したい目的は何でしょうか?ただ本屋に自分の本を並べたいなら、大手の出版社に大金を支払えば全国で(期間は限定されますが)扱ってもらえます。おそらく、そんな小さな夢ではないと思います。
自分の知識を広めたい!ブランディングとして活用したい!悩んでいる人たちを救いたい!など様々あると思いますが、その初心を忘れずに、その気持ちを出版社の編集担当者と共有することが大切です。出版してからは本の内容は変更できませんので、執筆段階での第三者(プロ)のアドバイスが重要になります。
つまり、良い本を出版するためには、あなたが書いた内容をアドバイスしてくれる出版社を選ぶことも必須条件となります。焦る必要はありませんので、いろんな出版社にアプローチしてみるのが良いと思います。もちろん、大手の出版社は企画の持ち込みNGのところもありますし、企画出版(自費出版)を扱っていない出版社もあります。