自費出版とは、簡単に言えば「著者が出版費用を全て負担する」出版形式のことです。しかし、自費出版のなかでも個人で楽しむだけの「個人出版」と、一般読者向けの「商業出版」があります。自費出版であっても、著者負担のない商業出版と同じメリットを得られる可能性があります。
1)自費出版の種類について
2)自費出版の方法とは?
3)自費出版をあつかう出版社の選び方
4)失敗しない自費出版とは?
・出版のゴールはどこ?
・ターゲットの選定が重要
・目次を大切にしよう!
・読者視点で読み返そう!
・自分に合った出版社を選ぶ
1)自費出版の種類について
自費出版とは、一般的には個人の素人が作った本というイメージが強くなり、出版したいという人からは「自費出版はしたくない」と忌み嫌われることがあります。が、そのような人たちは大きな勘違いをしていることが多いです。
まず自費出版には2種類が存在します。それが「商業出版」と「個人出版」です。その出版の目的や読者設定によって自然に区分されます。どちらも金銭的なメリットを得ることは可能なので、やり方次第では“ひとつの仕事”としても成立します。
・商業出版
一般的に「商業出版」と言えば、著者負担のない出版をイメージすると思いますが、自費出版であっても商業出版に区分されることもあります。「商業流通する」「印税が発生する」「ISBN登録がある」を満たすことで、単なる自費出版という扱いではなく商業出版になります。
もちろん、一般読者向けに販売されるわけですから、例えば、著者の「ブランディング」や「知名度アップ」にもつながるのは言うまでもありません。ただし、ただ「出版した」という事実だけでも影響力はありますが、それ以上に大切なのは読者の心に響くかどうかだと思います。
実際に、読者から喜びの声や感想をもらったりすると、本を出版してよかったと感じます。仮に、著者の目的がブランディング目的であったとしても、本のクオリティが高ければ、本の内容だけで救われる読者も現れます。それこそが、著者が費用を負担した自費出版であろうが関係なく“商業出版の魅力”と言えるでしょう。
・個人出版
家族や身内向けに自分の生きた証を残すような自伝・自叙伝などは個人出版になります。また同人誌などの個人製作かつ個人販売、または著作権がグレーなものなども個人出版です。なかでもコミックマーケットのような特殊な市場においては、ちゃんと商売として成立している人(会社)もいます。
その本が売れるか売れないかは、あまり商業出版と個人出版では関係がありません。その本を売る方法と戦略があるかどうかだと思います。もちろん、何かしらのSNSで固定ファンがいるような人たちであれば、それらを活用して宣伝すれば売れやすいでしょう。
そのようなツールがない人であっても、どんな本を作るか、ターゲット選定や他の書籍との差別化をしていけば「売れる本」に化けることもあります。ただし、読者の目に触れる絶対数が多くなければいけませんので、商業出版に比べると個人出版ではすぐに限界が来るでしょう。
2)自費出版の方法とは?
・出版社を経由する
商業出版という形であれば、必然的に、こちらを選択することになります。書店に並べるか、ネット(Amazonなどの大手通販サイト)で販売するか、どちらにしても商業出版の条件を満たすために必要になります。ちゃんとした出版社であれば、本のクオリティ維持もサポートしてくれますので、まともな本ができる可能性が高いです。
ごく稀な話ですが、2冊目として「著者負担なしの商業出版」の可能性が生まれます。それは出版社と関わることによって、ひとつの“コネクション(つながり)”ができたわけです。最初が自費出版であっても、その著者の人柄や知識、作家としての資質などを認めてもらえる大チャンスになります。
・個人で印刷する
やはり費用的には“かなり”抑えることができます。ご自身でブランド(固定ファン)を持っていたり、売れる市場があるなら、個人で印刷して販売してみるのも良いかもしれません。あなたの市場は限りがあると思いますので、その分、製作すべき部数も分かりやすいと思います。
ただし、どうしても著者ひとりで全てを行っていくことが多いので、その本は作品としてのクオリティが低いものになるのは言うまでもありません。自分のセンスによほどの自信があり、かつ世間的に認められている人であれば問題ないとは思います。私はそのような本に出会ったことはありませんが、もともと自己満足の世界で出版している人が多いので、あまり気にする話でもないかもしれません。
3)自費出版をあつかう出版社の選び方
作品のクオリティを高めるためには、著者ひとりの力ではどうにもなりません。どう頑張っても、視点の偏りが生まれて「独りよがりな作品」になりがちです。プロの編集担当者からサポートおよびアドバイスを受けることで生まれる品質があります。
つまり、商業出版を考えるのであれば『自費出版の出版社選び』という新しい問題が発生します。ここでは、出版社を選ぶポイントをまとめていきたいと思います。どのような目的で自費出版という手段を選んだのかを改めて考えてみてください。きっと、あなたに合った出版社がハッキリと見えてくるでしょう。
・とにかく出版費用を抑えたい
本来の目的ではありませんが「価格で選ぶ」というのもひとつの選択肢になります。まずはお試し的に出版を体験してみたいのであれば、価格だけで選ぶというのも良いでしょう。もちろん、費用が安い理由はあります。あなたの作品そのものには全く興味がなく、お金だけの関係性がほとんどです。もちろん、作品のクオリティを高めるような作業は皆無となります。
ブランディングや本気で読まれることは少ないですが、電子書籍という選択肢も良いかもしれません。電子書籍がブランディングに適していない最大の理由は、気軽に読めるものは“気軽にすら読まない”ものです。またスマホなどで流し読みをされやすく、著者の想いが正しく届きにくいのが電子書籍の特徴(最大のデメリット)になります。
・書店に並べたい
書店に並べることは、短期的なブランディングに適しています。やはり本屋さんに並んでいる「自分の本」を見るのは嬉しいと思います。ある意味、その喜びだけでも十分に出版した価値があるかもしれません。ただし、自費出版で書店に並べた本は2~3週間もすれば全て消えてしまいます。なぜなら、お金を支払って店頭に置いてもらっているので、本が並んでいる期限が決まっているのです。そこで売れ残った本は在庫としてあなたの手元に戻ってくるか、人知れずこっそり捨てられてしまいます。
もちろん、書店に並んだことで新しい読者の目に留まるメリットはあります。現実的な話で申し訳ありませんが、自費出版の本は“ほとんど”が売れません。あなたが読者の立場だとして、無名の著者の本を買おうと思うでしょうか?私なら著名人で同じような内容を書いている本を選びます。つまり、手に取って、目次などを確認して、さらには購入するという段階まで進ませる魅力とクオリティが必要になります。
・永続的に販売したい
長期的なブランディングに適したのが『オンデマンド出版』になります。受注生産の出版方式になるので、在庫切れという概念がありません。つまり、永遠とあなたの本を販売し続けることが可能なシステムです。ただし、オンデマンド出版をあつかう出版社のなかには、作品そのものに興味がなく、お金のやりとりだけの作業的な業者も多いのが現状です。そのような出版社では良い本は作れません。
こちらは個人出版的に出版することも可能です。MyISBN(他にもある)のような個人でオンデマンド出版ができるサービスもあります。ただし、何度も言いますが、著者ひとりで作った本は作品レベルが低く、そのサービスによっては、商業出版と呼ぶには小さすぎる市場の場合があります。価格も抑えられることを考えれば、お試し出版や個人出版の延長線上という感覚なら良いと思います。
4)失敗しない自費出版とは?
せっかく自費出版をしても、著者(あなた)の目的が達成できなければ全てが無駄になってしまいます。もちろん、最低限の作品としてのクオリティ維持のためにやるべきことがあります。失敗しない自費出版とは、あなたの出版の目的を明確にして、その目的を達成するために考えておきたい内容をまとめます。
・出版のゴールはどこ?
これまでに出版の目的という話はしてきましたが、その先には何がありますか?あなたの目的が「ブランディング」だとすれば、その読者から新規のお客さんが生まれると最高なゴールになります。他にも、本で名前を知ってもらいブログやSNSのフォロワーが増えるなどもひとつのゴールかもしれません。全ての読者がそうなるとは限りませんが、ちゃんとゴールをイメージ(設定)して、ホームページやSNSへの誘導する手段も考えておきましょう。
・ターゲットの選定が重要
ターゲットの選定とは?簡単に言えば「どんな読者に読んでもらいたいのか?」です。男女問わず全年齢の方に読んでもらいたいという本でも良いですが、やはりターゲットの絞り込みをした方が「私のための本」という親近感や説得力が増します。逆に、絞り込みをしなければ「誰でも読める本は誰にも読まれない」という状態になるかもしれません。
・目次を大切にしよう!
本を購入するときに、読者はどんな行動をとるでしょう?本のタイトルや表紙をみます。次に「目次」を開いて、どんなことが書いているのか、大まかなイメージを掴もうとします。その本で読者が得られる“メリット”を感じさせるような目次になるように試行錯誤してください。出版社経由の出版であれば、編集担当者に相談して、第三者(読者)の視点も取り入れていきましょう。
・読者視点で読み返そう!
一度、書き終わった後で、すぐに読み返すのはよくありません。ある種の達成感に満たされた状態では、誤字脱字はもちろん、小さな言葉のミスや伝わりにくい表現などを見逃してしまいます。実際の編集と確認のなかでも、何度も何度も読み返しているのに、出版後に「こうしておけば良かった」と著者がおっしゃることもあります。
・自分に合った出版社を選ぶ
やはり自費出版で大切なのは出版社との関係性だと思います。ちゃんと第三者の意見がもらえて、作品としてのクオリティを高めてくれる出版社を選んでください。本の出版は著者ひとりでは難しいので、編集担当というプロの知識と経験を活用していきましょう。ただ安いだけで作業的な出版社では、あなたの想いが読者に届くのは難しいかもしれません。